時間分解変位電流評価法の確立と有機デバイスのキャリア生成機構の解明
Project/Area Number |
10J07042
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Applied materials science/Crystal engineering
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 有弥 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 変位電流評価法 / 有機電界効果トランジスタ / 有機薄膜太陽電池 / チャネル形成 / キャリア生成 / 巨大表面電位 / Time-of-flight / インピーダンス分光 / 有機太陽電池 / 光電子分光 |
Research Abstract |
本年度は大きく分けて、(1)有機電界効果トランジスタ(OFET)の劣化過程の評価と(2)有機薄膜太陽電池(OSC)内のキャリア挙動の評価を行った。まずは(1)について詳細を示す。 一般にOFETの劣化は素子内にトラップが形成されることで生じると考えられているが、素子駆動に伴う詳細なトラップ形成過程は評価されていない。変位電流評価法(DCM)はキャリアの挙動やトラップ形成の有無を評価できる有力な手法であるが、ドレイン電圧を印加したOFET駆動状態における研究はほとんどなされていなかった。本研究ではOFET駆動状態でDCM測定が可能な3端子DCMを提案し、OFETの劣化過程を調べた。素子を低電圧駆動することで閾委電圧のシフトが観測された。またシフト量はDCMで見積もられるトラップ電荷量に比例していることから、OFETの劣化はトラップ電荷によるものと断定できた。また3端子DCM結果から、トラップ電荷は(1)ソース電極直下、(2)チャネル部、(3)ドレイン電極直下と段階的に生じることがわかった。これは電界強度に依存してトラップが形成されるということを明瞭に示している。 次に(2)のOSCに関する結果をまとめる。ドナー/アクセプタ積層型のOSCにおいては、Bathocuproine(BCP)層をアクセプタ/カソード界面に挿入することで、変換効率が向上することが報告されている。しかしBCPの最低非占有軌道(LUMO)は1.6-3.0eVと小さく、アクセプタ/BCP界面には大きなエネルギー障壁が存在していることがわかっている。このようなエネルギー障壁は一般に電子の輸送を妨げることから、BCP層挿入による変換効率向上の起源は完全には理解されていないと言える。本研究ではTime-of-flight(TOF)法を使用して電子の放出過程を調べた。その結果、BCP層を挿入しても素子内で生成された電子はスムーズに放出されていることがわかった。これはBCPのLUMO軌道を介して電子放出が生じていると言うよりも、BCPのギャップ内に準位が存在しており、この準位を介して電子放出が生じていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験は大きく分けて有機電界効果トランジスタと有機太陽電池を行う予定をたてており、これについては計画通りに遂行できた。しかし結果を論文として提出するまでには至らなかったことから、やや遅れているという判断に至った。現在ほぼ論文は完成したので、近いうちに投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず有機電界効果トランジスタの劣化に関する実験については、本年度の実験からドレイン電圧が素子の劣化に影響を与えていると思われる結果が得られている。これを詳細に調べるために、今後はドレイン電圧を変化させて詳細な劣化過程を調べる必要がある。さらに光電子収量分光法を用いて、トラップ電荷のエネルギー深さに関する実験もあわせて行いたい。また現在はドレイン電圧を電池電源を使用して供給しているため、印加できる電圧に制限がある。今後はフロート電源供給装置を測定計に組み込んで、3端子測定法をさらに改善する必要がある。 次に有機太陽電池の実験に関しては、アクセプタ層/バッファ層間のエネルギー障壁に関わらず、比較的スムーズに電子の放出が生じるという結果が得られている。この放出はバッファ層のバンドギャップ内準位を介して生じていることを示唆しており、光電子分光法などによる直接的なエネルギー準位の評価が必要となる。
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Report
(3 results)
Research Products
(19 results)