セラピーツーリズムと自己物語にみる<ライフポリティクス>の民俗学的研究
Project/Area Number |
10J07601
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Cultural anthropology/Folklore
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
門田 岳久 関西学院大学, 人間福祉学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2010 – 2011
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
|
Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
|
Keywords | セラピー文化 / 経験消費 / 自己アイデンティティー / 消費社会 / 生活史 / 聖地 / 人格 / ナラティブ |
Research Abstract |
本研究は「心」や「経験」を商品化したツーリズムの社会的成立条件を分析し、そうした移動行為への参与観察や参加者へのインタビューを行うことで,高度消費社会に特徴的な自己や主体の形成過程を明らかにすることを目的とした。2年目にあたる平成23年度は、前年度までの実地調査でのデータ分析、理論枠組みの洗練作業、そしてアメリカやドイツの民俗学会・研究所での成果相対化が実施作業の中心となった。事例の検討は(1)2010年度末に行った沖縄でのスピリチュアルツーリズムの調査、(2)2011年夏期新潟県佐渡島にて行った短期農村移住者への調査に関して行った。調査ではこれらの移動実践を行った人々への生活史調査を行ったが、それらの語りの分析から導き出された一つの強い傾向は「脱イデオロギー性」とも言うべき、自己の経験を大きな物語へと回収されることを強く拒む志向性である。たとえば沖縄の聖地を旅する人々は自身に「信仰」が無いことを強調し、スピリチュアリズムや神秘主義といった宗教類型への文脈化を拒み、他方農村移住者も環境主義や農本主義的といった思想とは自らが無縁であることを語りの上で強調する。ここに見られるのは、実践上の動機をあくまで個人の意思や生活歴に位置付けようとする傾向であり、宗教研究で言う一種の私事化の表れであるが、自己が焦点化されている点に経験消費経済に顕著な特徴を窺うことができる。イデオロギーに対するリアリティーの衰退と、「自己」や「経験」への内閉化がパラレルな関係であるとすれば、それはどのようにして進捗したのか。今後はこれまでの質的データや理論枠組みを統合する形で上記の問いへの道筋を示す予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では今年度は実地調査に加え,これまでの研究課題を国際的な基準に則って相対化・理論化することを一つの大きな目的としていた。それに従いドイツにおいて民俗学・文化人類学の最新動向を収集するとともに,アメリカ民俗学会での発表を通じて研究者と意見を交換するなど,予定していた重要なプログラムがおおむね順調に推移している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は現代的現象を民俗学の観点から考察するにあたって,同時代の事象を社会科学的に同じく考察する多様な分野との学際的交流に基づくものとして構想している。今後はツーリズム研究,社会学を中心とした異分野との共同研究等を通じた対話の中から民俗学上の理論的アドバンテージを確保していくことが肝要である。特別研究員を当初予定より一年早く中途辞退するため、本研究課題も中断されることになるが、残された課題は今後他の研究助成を得る中で継続して遂行していく。
|
Report
(2 results)
Research Products
(13 results)