Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
平成24年度は大別して、米国での在外研究と単著の出版という二つの分野で研究を実施した。第一に、5月まで、ジョージワシントン大学・国際問題大学院・安全保障紛争研究所(ワシントンDC)にて、昨年度(2011年8月)から続く在外研究を行った。ここでは、安全保障理論、とりわけ合理的選択論のアプローチに基づく同盟理論と抑止理論を中心に研究を遂行した。第二に、報告者の博士学位論文および昨年度に公刊した論考を中心とするこれまでの研究成果に、米国での在外研究で得られた同盟理論や抑止理論に関する知見を加える形で、12月に単著を公刊した。同書は、1950年代から1970年代までの日米同盟の制度化の史的展開を検証するもので、具体的には、なぜ当該期に日米同盟の制度化が進んだのかという問題の解明を目的としている。この問題に対して、同書は、国際関係理論の知見を援用しつつ日米の外交文書を中心とする一次史料に基づき、次のような議論を提示した。すなわち、同書は、度重なる国際環境の変化によって日米間に相互不安が生じ、それに対処する手段として同盟の制度化が行われたと論じている。この議論は具体的には以下の三点からなる。第一に、日本政府は、米国は日本に安全を提供する能力も意志もないのではないかという日本政府の疑念を抱いた。第二に、米国政府は、日本が米国の提供する安全に疑念を抱いたり、ナショナリズムを高揚させたり、米国からの負担分担圧力に反発したりすることで、中立化や核武装などの自立的な外交・安全保障政策を再選択することを不安視した。第三に、日米両国は、相手の意図や行動に関する不確実性--相互不安--を軽減するために、同盟の制度化を進めた。従来、日米同盟の制度化という長期的な現象を分析した実証研究が希少だったことに鑑みれば、同書の公刊によって、日米同盟に関する研究史上の空白が埋められた思われる。
All 2012 2011 2010
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) Book (1 results)
東洋文化研究所紀要
Volume: 160冊 Pages: 79-126