Research Abstract |
本研究の目的は,不特定多数が営みを行う実空間という文脈の中で,その変化を的確に捉えつつ,人々の心を掴み,主体的に関与してもらえる情報提示の基盤技術を構築し,インタラクションの設計手法の確立である.また,情報の受け手に取って有益な意味を効率的に伝達する提示手法を構築することである. 本年度は,ひろく開かれた空間において「空間性」と「実体性」を併せ持つ情報提示の基盤技術の構築と,環境自体が持つ情報・そこに存在する人々の状態のセンシング技術の試作を行った.この成果として,前年度に構築し,公共空間である羽田空港にて三ヶ月間の実証実験を行った,提案手法による300m^2超の実空間型ディスプレイとそれを用いたコンテンツの記録を元に,分析・考察を深め,検討を行った. 本年度1月からは,特別研究員制度の枠組みを活かし,米国Disney Research PittsburghのInteraction Design Groupでインターンとして在籍し,研究計画を遂行している.本研究所は,米国ウォルト・ディズニー社とカーネギーメロン大学のコラボレーションにより設置されており,ウォルト・ディズニー社が世界的に展開する,ディズニーランドを始めとしたテーマパークでのアトラクション,またキャラクター関連商品など,大空間で,多数の様々な属性のユーザを対象としたアプリケーションなどに応用できる技術の研究開発を行っている.当特別研究員の研究計画と,非常に親和性が高い領域であり,研究を急速に推し進められる環境であると考えている. また,10台の大型液晶パネルを用い,貨物コンテナ内に作成した電車の車窓をもした暗室で,車窓からの風景を再生するシステム,「コンテナの車窓」を作成した.これは,通常の電車による旅の体験と異なり,その車窓からの映像と音声のみを抽出して提示することによる,強い没入感を狙ったものである.本システムの展開は,当特別研究員のこれまでの研究を元に,大空間での不特定多数への情報提示,及び,人間の認知特性を考慮に入れた情報提示手法の研究による知見の実証と,今後の研究の調査活動として行なった.本システムを,6日間で7万人以上の来場者が訪れた東京デザイナーズウィークにて展示し,データを取得した. 現在までに研究は順調に進展している.最終年度はこれらの成果を元に,人間の認知特性を考慮に入れた,情報の受け手に取って有益な意味を効率的に伝達可能な実空間の知能化の方法についての検証を行う.さらに,既に開発したシステムの組み合わせによる統合的システムの開発をおこない,これまでの研究成果をまとめる.
|