マウス嗅覚系における嗅細胞の軸索投射メカニズムの解明
Project/Area Number |
10J09693
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Neuroscience in general
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井ノ口 霞 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 神経回路形成 / 僧帽・房飾細胞 / 嗅覚受容体 / 嗅神経細胞 / 軸索ガイダンス |
Research Abstract |
我々高等動物は外界からの様々な情報を五感を介して識別し、行動している。この高度な情報処理は正確な神経回路構築により支えられている。マウスの嗅覚系において、匂い受容を担う嗅細胞はたった一種類の嗅覚受容体(OR)遺伝子を発現し、同一のORを発現する嗅細胞の軸索は嗅球上の特定の位置に投射し、糸球構造を形成する。つまり、匂い分子と発現するORとの結合情報は、嗅球においてはどの糸球が発火したかという位置情報(匂い地図)へと変換されている。この匂い情報は二次神経細胞である僧帽細胞を介し、高次中枢である嗅皮質へと伝えられている。本研究では、神経地図を介して接続する嗅細胞と僧帽細胞が、どのように適切なシナプス形成を行うかという問題解明のために、先行研究により機能的な違いが存在すると言われている嗅球の背腹軸方向の神経接続について研究を行った。 私は、嗅球腹側に配列される僧帽細胞が嗅上皮腹側に位置する嗅細胞と同様にNrp2を発現しており、嗅球腹側において、Nrp2陽性の嗅細胞軸索とNrp2陽性の僧帽細胞が対峙していることを見出した。更に遺伝子操作マウスの解析により、嗅細胞由来のSema3Fが嗅細胞の軸索投射のみならず、僧帽細胞の細胞体の誘導及び配置にも関与していることを明らかにした。さらにNrp2を発現している僧帽細胞は嗅皮質の特定の領域に偏って投射していることが明らかになった。本研究により、嗅上皮背側に位置する嗅細胞が発現する分泌性のligand Sema3Fが、嗅細胞の軸索と僧帽細胞を共に背腹軸に沿って配向させ、両者間の適切なシナプス形成を可能にしていることを明らかにした。この知見は、神経地図を介して接続する2種類の神経細胞の集団が、シナプス形成の為にどの様に持ち寄られるのかという、脳研究全体の重要問題に糸口を与えたという意味で重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、神経回路形成の研究は、神経細胞がどこに投射するかということに主眼を置いて行なわれてきた。しかし、今回私は、前神経細胞由来のligandにより前神経細胞の軸索投射だけではなく、後神経細胞の細胞体の配置も制御し、前神経細胞と後神経細胞の適切な神経接続を可能にしているという新しいメカニズムを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、軸索ガイダンス分子であるNrp2を発現している僧帽細胞が嗅皮質の特定の領域に投射していることが明らかになった。今後は、この僧帽細胞がどのような機能を持っているのかを遺伝子組換えマウスを用いた行動実験などで明らかにしていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)