Project/Area Number |
10J09785
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Sociology
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 賢二郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2012: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 社会的包摂 / 社会的排除 / 障害者雇用 / 合理的配慮 / 再帰性 / 障害 / 社会モデル / 差別 / 構築主義 / インクルーシブ教育 / 身体 / 包摂 / 排除 / 潜在能力カアプローチ / 多文化主義 / 共生 / 障害文化 |
Research Abstract |
2012年度は、日米の障害者雇用制度の検討を通じて、労働との関係で障害者の社会的包摂のあり方について考察した。結果として以下の知見を得た。 1.社会的包摂と身体の循環的関係 社会的包摂において、身体的機能不全(インペアメント)の有無にかかわらない処遇という方向性は不可欠の要素である。ただ、インペアメントを含む身体的条件を単純な形で度外視するような社会的包摂は、かえって身体的条件による排除を維持・再生産しうる。障害を持つアメリカ人法(ADA)のような差別禁止制度や、最低賃金制度はこの種の帰結を生じる。 2.制度の複合性 1.を前提とすると、広範な包摂の保障のためには、一つの制度が生み出す排除に別の制度が対処するような複合的な制度が必要となる。この種の制度は、全体として身体的条件によらない社会的包摂を近似的に実現する。この制度の射程には、差別禁止制度や割当雇用制度の他に、賃金補填や日中活動、所得保障なども含まれうる。 3.社会的包摂と再帰性 1.と2.は、社会学における再帰性との関連で捉えうる。再帰性を、二つの項目の一方が他方を規定する関係性に代わり、ある事項が自身と取り結ぶ循環的関係性と広く定義すれば、障害者の労働への包摂は、二つの意味で再帰性を要する。第一に、包摂的制度は、自身が生み出す排除への反省的視点を繰り込む必要がある。第二に、それにより、個人の生は身体的条件からより自由になる。これは、差別禁止制度単体が、差別を維持・再生産してしまうことと対照的である。 4.制度の一体性と身体的差異 先述の複合的制度がどの程度一体的に運用されうるかは、身体的差異の位置づけに依存する。割当雇用と賃金補填の一体的運用が可能なのは、各制度が身体的差異の可能性を織り込んでいるからだが、全体としては身体的条件にかかわらない包摂をより広範に達成しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は、障害者を含む社会的包摂のあり方を明らかにすることであった。本年度の研究を通じて、この問題関心に対して、一つの回答を得た。それはすなわち、再帰的・複合的な制度群の相互接続による、単一の差別禁止制度より広範な包摂である。この点で、本研究は一応の目的を達成したといえる。なお、掲載未確定であるが、こうした成果は雑誌論文としてまとめ投稿を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
障害者の社会的包摂を論じるに当たっては、所得保障・介助保障についても考察を行う必要がある。これらの制度を持続可能で十分な水準に保つためには、相応の資源の投入が必要であるが、こうした議論はしばしば財源問題に行きつく。この財源の問題を、経済学ではなく主に社会学の観点からとらえようとするとどのようになるであろうか。この点についての考察を中心に、障害者を含めた社会的包摂のあり方についてさらに考察を深めていきたい。
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