Project/Area Number |
11166233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 幹人 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70197896)
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Project Period (FY) |
1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Keywords | カオス / 分子内振動エネルギー再分配 / 非線形共鳴 / アーノルド拡散 / 対称性 / 小数多体系 / 遷移状態 |
Research Abstract |
反応過程において、その統計性の起源と、選択的な反応の可能性は、互いにコインの裏表のような関係にある。この二つの問題において共通して鍵となるのは、分子内振動エネルギー再分配(Intramolecular Vibrationalenergy Redistribution、略してIVR)のダイナミックスをどのように理解するか、という課題である。 IVRは、振動励起された分子において、必ずしも反応座標と直接に結合していないモードから、直接結合しているモードへとエネルギーが移動していく過程である。このような、振動エネルギーの移動過程が存在することと、考えている系のハミルトニアンが非可積分であることは、本質的に関係している。従って、IVRがどのように起こるかを知るには、非線形共鳴が起こる領域が、状態空間において、どのようにつながっているかを調べれば良い。力学系の分野では、一般に、非線形共鳴が起こる領域が編みの目状となることが知られており、アーノルドの編みの目(Arnold web)と呼ばれる。よって、具体的な分子に対して、アーノルドの編みの目の構造を解析することから、IVRの統計性の程度、あるいは逆に、選択的な反応の可能性に関して、指針が得られるのではないかと推測される。 具体的な分子を対象として、このような解析を行うためには、例えば、分子振動に対する実効ハミルトニアンであるDunham展開を利用すれば良い。このようなアイデアに基付いて、アセチレンを対象に、Dunham展開に対応する古典的なハミルトニアンを考え、振動モード間の非線形共鳴が起こる場所の分布を調べた。その結果、アセチレンの点群による対称性のために、多くの非線形結合が禁止され、系が非エルゴード的であること、即ち、反応過程のダイナミックスが、系の初期条件に依存する可能性があることが分かった。これは、アセチレンの反応過程における選択性を示唆する。また、このことから、分子振動におけるカオスにおいて、系の対称性を考慮することの重要性が示された。
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