Project/Area Number |
11F01337
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
Organic chemistry
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHOU Chih-ming 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
CHOU Chih-Ming 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2011 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2013: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2012: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2011: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | π共役系 / アントラセン / 穂ね格柔軟性 / 環状分子 / 固体蛍光 / エキシマー / クリスタルエンジニアリング / 結晶歪み / ペンタセン / π電子系 / 固体構造制御 / 分子間相互作用 / エキシマー蛍光 |
Research Abstract |
我々はまず、優れたπ電子骨格として、高い発光性を示し、なおかつ強いスタッキング能をもつ9,10-ビス(2-チエニル)エチニルアントラセンを選定し、これらの骨格をアルキレン鎖で環状に連結した二量体の合成に成功した。その溶液または固体状態における吸収や蛍光などの光物性を、対応する単量体と比較したところ、単量体は溶液中で498nmに量子収率0.84という蛍光を示したのに対し、二量体では563nmへと長波長シフトした蛍光(量子収率0.72)が観察された。これは、アルキレン鎖で架橋したことによりπ共役骨格の配向が制限され、溶液中でもエキシマーが形成しやすくなったためと考えられる。蛍光寿命が長いエキシマー発光にもかかわらず量子収率が高い、珍しい発光剤としてバイオイメージングへの応用を展開中である。また、合成したアルキレン架橋環状二量体の固体状態におけるパッキング構造を明らかにするため、単結晶X線構造解析を実施した。すると、アルキレン鎖の組み合わせが両方ともヘプチレン鎖の場合にのみ、高い再現性で特有の曲がった形の結晶が得られることがわかった。曲がった結晶が得られる原因を調査した結果、アルキレン鎖が中央の空隙を埋めるためのゴーシュ型でなく別のコンフォメーションをとろうとして、πスタッキング構造が歪みながら速度論的に積み上がると、曲がった結晶になると推測できた。この成果により、Chou博士は、2013年台湾で開催された国際会議ISNA-15でポスター賞を受賞した。なお現在、一流化学国際誌Angew. Chem. Int. Ed.に論文投稿準備中である。 一方、当研究室において進めている、平面構造に固定された含ホウ素ルイス酸π共役系と対をなす化合物群として、含窒素ルイス塩基π共役系の開発にも着手した。π拡張された新規ヘテロトリアンギュレンに関する合成と物性解析に成功し、この成果は化学国際誌Org. Lett.に掲載が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、標的化合物群の合成と各分子のパッキング構造と物性の評価を完了した。蛍光量子収率の高いエキシマー発光という珍しい光物性が明らかとなり、バイオイメージング色素としての展開が期待できることがわかった。また、予想外なことに、「曲がった結晶はなぜ得られるのか?」という根源的な化学の問いに答えうる分子系として、そのメカニズムの解明に貢献した。さらに別の展開として、骨格中央に窒素原子を導入した新規π共役化合物の開発にも成功しており、有機エレクトロニクスをはじめとする分野での活躍が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、結晶が得られるメカニズムに関して分子設計のレベルでの議論がまとまり、論文投稿に向けて原稿の執筆がほぼ終了しており投稿間近である。今後は、蛍光量子収率の高いエキシマー発光を利用して、開発した発光性ダイマーのバイオイメージングへの展開を図る。 また、既にOrg. Lett. 誌に掲載が決定したπ拡張された新規ヘテロトリアンギュレンに関しては、当研究室のもつ含ホウ素ルイス酸π共役系と組み合わせてルイス酸塩基錯体の形成を溶液または固体状態で制御することにより、強誘電性有機材料などの新しい機能システムの開拓へとつなげる。
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