Project/Area Number |
11J04746
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Algebra
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永野 中行 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | ヒルベルト・モジュラー関数 / テータ関数 / クンマー曲面 / K3曲面 / アーベル曲面 / 周期写像 / 超幾何微分方程式 / トーリック多様体 |
Research Abstract |
昨年度の研究においてある偏極構造を持つような二つのパラメータを持つK3曲面族に注目し、その周期写像を研究し、その逆対応のテータ表示を与え、それが√5のヒルベルト・モジュラー関数を与えることを示しました。ところで、そもそもヒルベルト・モジュラー関数とは、実乗法を持つ主偏極アーベル曲面のモジュライの理論と深く結び付いて研究されてきたものです。そこで、今年度はこのK3曲面族の塩田・猪瀬構造を深く研究しました。則ち、当該K3曲面上に存在する適切なシンプレクティック対合を幾何学的に実現し、この対合でK3曲面を割ると、二つのパラメータを持つクンマー曲面族の具体的な定義方程式が得られます、,このクンマー曲面の二重被覆として√5の実乗法をもつアーベル曲面が存在します。よって、このクンマー曲面によって、われわれのK3曲面族と√5の実乗法をもつアーベル曲面族とが結びついている、と言えます。更に、このわれわれのクンマー曲面族はそれ自体幾何学的に興味深い対象となることがわかりました。このクンマー曲面は複素二変数空間の二次式と五次式で分岐する二重被覆として認識されるからです。クンマー曲面族の二つの複素パラメータは、これらの二次式と五次式の幾何学的な配置を与えるとみなすことができます。そして、クンマー曲面の周期写像は、ある二変数代数関数をこれら二次式と五次式とで囲まれた実二次元の部屋上で積分して得られる積分たちの比を多変数解析管巣として解析接続したもので与えられます。この結果により、古典的な楕円積分(リーマン球面の四点で分岐する二重被覆)と楕円モジュラー関数との間の対応が、二変数代数関数の積分と判別式が5の二次体から決まるヒルベルト・モジュラー関数との間の対応へと自然に拡張された、と言うことができます。以上で、多変数解析関数論、代数多様体のモジュライ、モジュラー関数・形式の数論、線型微分方程式らが緊密かつ自然に結びついた一つの非自明な実例を与えることができた、といえます。この研究結果について論文にまとめ、また学会・研究会などにおける発表も適切に行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において、K3曲面の塩田・猪瀬構造と、√<5>の実乗法を持つアーベル曲面から得られるクンマー曲面を研究する計画を立てていました。先述の通り、このクンマー曲面を明示的に捉え、更にその周期積分を幾何学的に深く研究して結果を得ることに成功したので、研究は順調に進展したと考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究において、多変数解析関数論、代数多様体のモジュライ理論、モジュラー形式の数論、線型微分方程式らが緊密かつ自然に結びついた一つの非自明な実例を与えることに成功しました。本研究はこれらの分野の今後の発展において少なからず貢献することが期待されます。例えば、種数2の超楕円曲線族との関連を通じて、今回得たモジュラー関数をレベル2構造を持つモジュラー形式で表示する問題が考えられ、実現すれば数論的応用が期待されます。また、今回考察した曲面族の部分族を適切に考えると、志村曲線の数論において非自明な応用が見出されることも期待されます。
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