Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)および嚢胞性線維症(CF)などの呼吸器疾患は,感染や喫煙などの外的要因に起因して生じる慢性気道炎症を特徴とする難治性の疾患である.一方,アトピー性皮膚炎(AD)はアトピー素因とよばれる遺伝的アレルギー体質の上に,様々な刺激(ダニ,環境因子など)が加わって生じる激しい痒みと掻破行動に伴う炎症症状を特徴とする慢性皮膚疾患である.これら難治性の慢性疾患の炎症誘発の分子基盤を明らかにすることは,疾患の病態形成の解明および新規治療薬開発の観点から重要である.本研究では皮膚および気道炎症の分子基盤を明らかにすることを究極の目的とし,これらの組織に発現し,生体恒常性の維持に寄与するCFTRに着目し,in vitroおよびin vivoにて種々の検討を行った.その結果,まず,変異CFTR発現マウスは,アトピー性皮膚炎モデルマウスとして有名なNc/Ngaマウスとは異なり,ダニ感染時にNGF依存的な掻痒行動のみを示すモデルマウスであることを示した(Hashimoto et al., Lab. Invest. 2011).次に,変異CFTR発現マウスに細菌成分であるTLR2/4リガンドを経気管投与したところ,正常マウスと比較して変異CFTR発現マウスの肺においてIL-17AおよびマウスIL-8オーソログであるKCの発現がともに増加した.また,IL-17Aは,CF気道上皮細胞において,TLR2/4リガンド誘導性のIL-8発現を相乗的に増加させ,このとき,p38MAPKが重要な役割を担うことが明らかになった(Mizunoe et al. J Pharmacol Sci. 2012).以上,本研究は,CFTR機能が破綻したモデルマウスおよび細胞を用い,皮膚および気道炎症病態の分子基盤を明らかにした研究である.
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