イネいもち病菌マイコウイルスの弱毒化機構の解明とその生物防除資材としての応用研究
Project/Area Number |
11J07853
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Plant pathology
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
浦山 俊一 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2011 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | イネいもち病菌 / マイコウイルス / パン酵母 / 生物防除資材 / 弱毒化 / 生育抑制 / dsRNA / ウイルスタンパク質 |
Research Abstract |
本研究は、イネいもち病菌弱毒化マイコウイルスMagnaporthe oryzae Chrysovirus 1(MoCV1)が宿主イネいもち病菌を弱毒化する機構の解明と、本ウイルスを生物防除資材として応用することを目的としている。MoCV1はイネいもち病菌を弱毒化し得るウイルスとして初めて報告されたマイコウイルスであり、感染により宿主であるイネいもち病菌に液胞の巨大化や小胞形成を引き起こす。また、粗精製したMoCV1を細胞外からイネいもち病菌に添加したところ細胞の異常な凝集を引き起こしたことから、生物防除資材として有用な性質を有していると考えられる。 今年度は(1)ORF4がイネいもち病菌の生育阻害を引き起こすこと(ORF4発現イネいもち病菌の作出と表現型観察)、(2)MoCV1感染によりイネいもち病菌の667個の遺伝子発現が変化していること(Illuminaを用いたトランスクリプトーム解析)、(3)ORF4発現によりパン酵母の858個の遺伝子発現が変化していること(Miseqを用いたトランスクリプトーム解析)、(4)ORF4タンパク質がイネいもち病菌の分生子発芽及び菌糸成長を阻害すること(メタノール資化酵母を用いたORF4タンパク質の産生とその活性評価)を明らかにした。 二ヶ年の研究により、MoCV1がイネいもち病菌に生育阻害を引き起こす因子ORF4を同定し、異種発現系により産生したORF4タンパク質を用いてイネいもち病菌の生育抑制効果を確認した。また、プロテオームおよびトランスクリプトーム解析により、本作用のメカニズム解明に向けた足がかりを得ることができた。一般に細胸外感染経路がみつからないとされているマイコウイルスの研究分野において、マイコウイルスを生物防除資材として利用するには、菌糸融合という、宿主菌をベクターとして利用する手法を採るしかなかった。本研究ではマイコウイルスそのものを用いた生物防除の可能性、さらにそこに含まれている抗菌性タンパク質の単独利用の可能性を示すことができた。また、ORF4タンパク質の作用機序解明は、新たな薬剤のターゲットとなる可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、イネいもち病菌の生育抑制因子としてMoCV1由来のORF4を同定し、作用機序解明に向けたプロテオーム及びトランスクリプトームを行った。ORF4遺伝子の作用点解明に向けた、ORF4タンパク質と相互作用するタンパク質分子を同定するには至らなかったが、生物防除資材としての利用に最も重要な、ORF4タンパク質を単独産生させ、イネいもち病菌の生育抑制効果を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ORF4タンパク質によりイネいもち病菌の生育阻害を引き起こせることが明らかになったため、今後は本遺伝子の活性領域の絞り込みと、より効率的かつ安定した活性領域を含むタンパク質の産生を行う。これにより比活性の向上、安定性の向上を図り、世界初のタンパク質農薬の創生を目指す。 作用機序解明に向けて、ORF4タンパク質と相互作用する宿主タンパク質の探索を行う。探索にはパン酵母とイネいもち病菌の両者を用いることで、精度の向上と研究の加速化を達成する。新規の作用機序が見いだされれば、新たな薬剤のターゲットとして、新薬の創生に繋げたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(23 results)