19世紀前半のフランスにおける歴史的建造物の保存・共有体制-カテドラルを事例に
Project/Area Number |
11J08000
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Cultural property science
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
川瀬 さゆり 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2011 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2012: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 19世紀フランス / 修復 / シャルトル大聖堂 / 屋根 / ヴィオレ=ル=デュク / ラシュス / クレット / 鋳鉄 / 19世紀 / 保存・修復 / 屋根組・屋根 / 鉄 / 文化遺産の共有 |
Research Abstract |
本研究では、文化遺産(patrimoine)という西洋的概念の特質を歴史的に再考するという背景の下、1836年から1841年にかけて実施されたシャルトル大聖堂の屋根の修復工事の研究を通じて、近代的保存修復黎明期の19世紀前半における修復を支えた組織と体制、建築家の修復思想、社会の保存修復への関心を検討することを課題とした。 これまでの研究において十分に明らかとされていない19世紀前半の建築家の修復思想について、今年度はシャルトル大聖堂だけでなく同時代の複数の重要な歴史的モニュメントにも視野を拡げ且つ分析対象を屋根組と屋根の棟を構成する装飾的部材(クレット)に絞込み研究を進めた。その結果バロン、デュバン、ドゥブレ、アラヴォワーヌといった同時代の重要な建築家たちが総じて当時の新材料である鋳鉄の経済性や中世建築への適用性を信じこれを大聖堂の屋根組部材にも用いていたという新事実が明らかとなった。中世建築への鋳鉄の使用を嫌ったラシュスやヴィオレ=ル=デュクと前世代の修復とを大きく分け隔てる思想的境界はこの点に顕著に現れており、それゆえこの成果は西洋的保存修復思想の特質とりわけオーセンティシティの問題の考察を進めるうえで極めて重要である。研究成果は口頭発表(フランス、パリ国際大学都市、平成24年4月)および論文の形で発表した(文化資源学会、平成25年3月採用決定)。当時の修復体制については先行研究の検討並びにシャルトル大聖堂とルーアン大聖堂を対象とした本研究による調査の結果、19世紀前半の工事においては国に対して地域住民側の積極的関与や主導権がある程度有効に機能していた実態が検証された。住民および地方権力に権限が保たれる体制の下で大聖堂修復が行われていた点は19世紀前半の大きな特徴であり、この結果は今後19世紀後半における大聖堂修復の中央一元化の問題の考察を進めていくうえで重要な立脚点を成すものである。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)