Research Abstract |
本研究は農家の組織化をネットワークと事業拡大の側面から分析することでそのメカニズムを解明するもので,研究対象は,農家(個別),組織クラスターの各レベルとした。 研究初年度(平成23年)には,農業構造の大半を占めている韓国の稲作農家を対象に,稲作農業経営諸活動における農家の持つネットワークの構造と特徴,また,事業拡張における農家の持つネットワークの構造と特徴について解明した。その結果,直販や加工事業を取り入れている農家であるほどソーシャルネットワークの規模が大きく,その活動範囲が広いこと,さらに,ネットワーク構築は経営者個人の自発的な動機や努力によって獲得していることが明らかになった。 本年度(平成24年)は,前年度の研究成果をベースに,韓国の農業生産組織の実態調査に基づき,組織が位置している地域農業の諸条件,組織の事業目的,形成契機,機能・役割,構成員の特徴,運営体系などから組織を類型化し,事業成果を比較分析するとともに,組織経営の成長要因を解明した。また,韓国で政策的に育成している地域農業クラスター事業団のうち優秀事例を選定し,その実態調査を通じて,事業団を構成する各主体の特徴,形成契機,運営体系,事業運営の現状と課題などを明らかにし,地域農業クラスターの成長要因や課題について解明した。なお,事業成果の経済的効果分析の際には,事業体の経営成長と関連したネットワーキングによる効果と事業体の活動により派生された地域内の雇用や参加農家の所得増大など地域社会へのインパクトの側面から分析した。その結果,複数主体の連携による事業推進においては主体間の継続的な連携を可能とする仕組みを促す措置が必要であること,地域偏差が生じないように地域の現状,特性に応じたクラスター事業の計画・運営ができる専門人材・組織を育成する必要があることが示唆された。また,長期的な視点から事業が行われる必要があり,関連政策相互の連携あるいは自由度の高い制度資金が求められることが示唆された。これらの研究結果をまとめたものは農林水産政策研究所の研究成果報告会で発表しており,成果報告資料として刊行される予定である。
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