Research Abstract |
現在までに数多くの生物において、全ゲノムのシークエンスが完了し、その網羅的解析が進行中である。光合成のモデル生物として非常に重要な位置をしめるSynechocystisにおいても、かずさDNA研究所によってその全ゲノムのシークエンスが完了し、ゲノムがコードする遺伝子の数はおよそ3,000と見積もられている。本研究においてはクロロフィル蛍光の2次元画像の時間変化を用いて蛍光の時間変化を解析することにより、さまざまな遺伝子破壊株の表現型を網羅的に解析する手法の確立を目指す。この新たに開発された方法を用いて、シアノバクテリアのゲノムがコードする遺伝子のすべての破壊株の表現型を解析することによって、シアノバクテリアのゲノム機能を明らかにすることを目的とする。 現在までにシアノバクテリアの遺伝子破壊株36種について2次元蛍光画像解析システムによる測定を行っている。その結果、グルコース6リン酸脱水素酵素、NADH脱水素酵素、グルタレドキシンなど、光合成に直接関与しない酵素の欠損株においても、蛍光強度の時間変化に明瞭な差が見られることが明らかになった。これは、蛍光を非光合成遺伝子の機能解明に用いた世界でも最初の例であると考えている。基本的には、蛍光の極大の位置、極大の大きさ、最終的な蛍光強度などの項目により、多くの変異株をクラス分けすることが可能であることを見いだした。 本年度の研究において、シアノバクテリアにおける遺伝子破壊株の大量解析手法をほぼ確立することができた。2次元CCDカメラを用いた蛍光解析自体はすでに光合成関係の遺伝子にターゲットを絞って行われているが、本研究においては、むしろ光合成以外の遺伝子に着目しているのが特色であり、このような網羅的解析を行った例は過去にない。これにより、トランスポゾンを用いて作成された全遺伝子の破壊株の網羅的解析に道を開くことができたと考える。
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