Research Abstract |
光演算技術は,大容量情報に対する並列処理性と,人間の優れたパターン認識能力を誘起する情報可視性をあわせ持ち,それらの有効利用はゲノム情報処理の効率化に寄与しうる.本研究では,その具体的手法として,空間符号モアレ法による2配列間マッチング演算を対象とし,特性,および,有効性を評価した. 空間符号モアレ法では,符号パターンや実現方法により,出力情報の加工が可能である.相補配列の検出能力をもつ対称型符号パターンを用いて,ステムループ構造の抽出が行えることを確認した.次に,濃度反転符号と非反転符号の組合せによる一致信号の先鋭化技術を考案し,従来方式では不可能であった1塩基置換によるミスマッチの検出を実現した.また,3色の符号パターンにより,3配列間マッチング処理を実現した. 一方,検討手法の簡便な利用をめざして,マッチング情報端末を試作した.2台の液晶ディスプレイ画面を半透鏡で合成する方式と,1台の液晶ディスプレイ画面に印刷済透明シートを張り合わせる方式とを実装した.後者の方式は,データ操作の自由度では劣るものの,視認性の点で極めて優れている. 光演算技術に基づく情報システムとして,自由空間光インターコネクションによる配列マッチング専用プロセッサの基本構成を検討した.空間符号を時分割展開した時間符号が処理スループットの点で優れていることを見い出し,予備実験により原理確認を行った. 空間符号モアレ法は,ホモロジー検索の基本演算であるドット・プロット法と等価な信号を出力する.しかし,モアレ縞は,各要素のマッチング結果が継ぎ目なく表されるアナログ画像情報である.その結果,人間のパターン認識能力をより強く誘起しうる可能性をもつ.符号化については,視覚特性を考慮する必要がある.一つの展開方向として,動態視の利用によりマッチング識別能力を向上させる方式が考えられる.
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