筋萎縮性側索硬化症(ALS)は中年期以降に発症する進行性の運動ニューロン変性疾患であり、この約5〜10%は常染色体優性遺伝による家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)である。FALS発症にはCu/Zn-SODの点突然変異が関与することは判明したが、その分子関連は不明である。これまで、青森県のFALS患者のSOD1遺伝子構造と赤血球内のSOD1の活性及び酵素化学的解析を行い、様々な物性変化を明らかにした。他の変異SODとの比較解析から、本病態の解明には分子物性のみならず、SOD1の細胞内超微局在性を明らかにする必要があることが判明した。ミトコンドリアやペルオキシゾームが細胞内における活性酸素産生の主な場であることに注目し、両オルガネラとSOD1の細胞内相互作用を解析して、本疾患における活性酸素代謝の場の異常が発症機構に関与する可能性を明らかにした。その結果、SOD1は細胞質に存在するだけでなく、膜画分にも存在することが判明した。さらに、FALSではミトコンドリア局所での活性酸素病態が増強し、これが本オルガネラ依存性のアポトーシスを誘起すること、およびその背景に長鎖脂肪酸の内膜毒性と膜電唖消失、これに続くチトクロムc遊離が関与すること、およびその毒性がカルニチンにより抑制できることを明らかにした。現在、SOD1変異のトランスジェニックマウスの解析からin vivoでの細胞内局在と病因との関係を明らかにしつつある。
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