清末「啓蒙」思想の基礎的研究-19世紀後半の改革論を中心に
Project/Area Number |
12710005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Chinese philosophy
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
川尻 文彦 帝塚山学院大学, 文学部, 助教授 (20299001)
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Project Period (FY) |
2000 – 2001
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
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Budget Amount *help |
¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2001: ¥300,000 (Direct Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2000: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
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Keywords | 中国 / 近代 / 清末 / 思想 / 啓蒙 / 洋務 / 革命 / 歴史 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトを進める過程で数多くの清末思想史に関わる文献を収集、解読した。さらに本補助金を利用して、香港(2001年3月)、ロンドン(2002年2月)、東京(随時)等への出張、資料調査を行った。香港、ロンドン行きは私にとってはじめての経験であり、有形無形の収穫を得ることができた。以上の作業を通じていくつかの研究成果を出すことができたので、以下に簡単に紹介する。論文「清末の「富強」をめぐって」では清末の知識人にとって究極の価値であった「富強」(wealth and power)が如何なる論理で想起され、如何なる含意をもったのかを分析した。その際、「重民」主義的な「富国」論が大きな意味をもっていたことを指摘した。論文「清末「洋務」考」では「革命史観」のもと、あるいは「洋務」「変法」「革命」の三段階論のもとで常に否定的な価値を与えられていた「洋務」という概念について多角的に分析した。「洋務」「洋務運動」「洋務派」「洋務派知識人」「洋務思潮」等、「洋務」にまつわる諸概念を取り上げ、同じく「洋務」という名前を冠してはいてもそれぞれ指し示す内容は異なり、「洋務」という概念を学問的な分析概念として用いることにはいささかの疑問符がつくことを立証した。論文「清末「革命」考」では従来取り上げられることが少なかった、中国同盟会成立(1905年)以前の1900年代前半に「革命」の語がどのような含意で用いられていたのかを鄒容や秦力山などの「革命」論を通じて分析したもの。それによってこの当時の「革命」論は「教育」を重視した「民智」の向上に重点を置いたものであったという点で「立憲」論とは大きな違いはないことを指摘した。この論文には孫文中心史観、革命史観をただすという意図もあった。論文「「伝統」の表象」は1980年代の「文化熱」の時期、華人学者林毓生をはじめしきりに「伝統」に言及されたその論理と要因を分析する。その過程で新文化運動時期の反「伝統」思潮にも触れる。以上の研究成果を通じて、1870年代から1900年代に到る中国近現代思想史のいくつかの側面を摘出することができたように思う。本研究プロジェクトを終えるに当たり、研究過程で見えてきた今後の課題は研究蓄積の手薄な1930〜1940年代のいわゆる民国時期の思想史を再構築すること。いま一つはロンドン等にある資料とつき合わせるような形で近代中国の知識人の「西洋」認識の変化を辿ることである。他日を期したい。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)