Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2000: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
本研究は,その研究目的を近代に成立した劇作上の合作,共作の起源から照らして,今日,様々なメディアに現れる共著,共同制作の問題を再考することに置いていた。その際,着目しようと試みた対象は,一つのテキスト内に生成される同時代の複数の声,つまり合作,共作によるダイアローグであった。というのも,これまでテキスト内における複数の声を問題にするとき,「作者の中の作者」として(ハロルド・ブルームに代表される)父と子とのエディプス関係を応用した議論のみが先行していたからである。日本文学の連歌に見られるような合作,共作の伝統をかんがみれば,本研究は,私たち日本人研究者がテキスト生成のプロセスをエディプス関係だけは論じ尽くしえないことを例証する一ケース・スタディになるにちがいないと考えたわけである。 しかしながら,本研究は理論的にも,一次資料の収集という点でもかなりの時間を有する大問題である。したがって,本年度は歴史を近代成立時にさかのぼる前に,今日における共著,共同制作の諸問題に限定して,調査を行なった。より具体的には,テキストを生産する位置にある文化エージェント(作家,ジャーナリスト,知識人など)が,書く対象(小説のモデルや社会の中でなんらかの被害にあっている人々)の声をどのように各々のテキストに取り込んでいるかについて,考察してきた。この問題の理論的側面については,「現代の代弁する知識人たち」と題した論稿,また具体的なケース・スタディとしては,障害者がイギリス演劇やアメリカ映画でどのような表象されるかを調査した論稿「エレファントマンを表象=代弁した知識人」で発表される予定である。
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