Research Abstract |
名詞の意味・統語構造を他言語との比較を通じ,項構造・統語構造の両面から総合的に解明し,名詞句の全体像を構築することを目指し,(1)名詞の意味役割付与のメカニズム(2)名詞句における項の統語的実現(3)名詞句の内部構造の3点から研究を行った。本研究は主に生成文法理論の枠内で、現代英語を主たる対象として行ったが,意味的側面にじゅうぶん注意を払うとともに,手法として,ゲルマン・ロマンス諸語との比較分析を積極的に用いた.このような観点から,英語統語論のほか,比較統語論関連の研究に注意を払った。これらの言語を観察することにより,英語の名詞の項構造にもじゅうぶんに光が当てられることになった.さらに,理論的側面に注意を払いつつも,実際のデータを重視した実証的研究にするため,コーパスを積極的に利用した.本年度は名詞の項構造に着目して,データ収集にあたり,名詞句に関する先行研究について,統語・意味両面にわたり,生成文法理論によるものを中心に,満遍なく集め分析した.また,最新の理論の変遷に常に注意を向け,必要であればデータの分析に取り入れてゆくという姿勢の下で,ミニマリスト・プログラムにおける成果を充分に援用した。このような成果を踏まえつつ,本年度は名詞の意味構造の分析を中心に研究を進めた.研究の蓄積が豊富な派生名詞から着手し,その後,年度後半からは非派生名詞に取り組んだ。このようなことから,本研究は名詞の意味・統語構造を他言語との比較を通じ,項構造・統語構造の両面から総合的に解明し,名詞句の全体像を構築する,実証的研究であることにその意義があると言える。
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