Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
第2年度となる平成13年度の実施内容としては、コヒーレント遷移放射の基本的な性質を探ると共に、特にコヒーレント回折放射をバンチ長モニターとして用いる事を想定し、実用的な回折放射ターゲットを開発するために必要な基礎実験を行うことを試みた。本研究では、線形加速器で生成された短バンチ電子ビームから放射されたコヒーレント放射のスペクトルを解析することで電子バンチ形状を測定するが、この際、バンチ長を種々変えて測定を行う必要がある。更に1回の測定中は、バンチ長等のビーム条件は十分に安定でなければならない。このため、当初は線形加速器のマシンスタディーを十分に行って、加速器の性質をよく把握する必要があった。東北大学原子核理学研究施設の線形加速器は、熱電子銃・バンチャー系(プリバンチャー、バンチャー)・加速管(1m管8本、2m管12本)等で構成されているが、ほとんどが30年以上前に建設された物であり、機器の老朽化が激しく、最近の加速器施設と比較してビームの安定度は乏しい。また加速器を立ち上げる度にビーム条件が異なってしまうため、同じ状態を再現することができなかった。一般にバンチ長は、バンチャー空洞に供給するマイクロ波の電力や位相を調整することによって決めることができるが、他のビーム条件を変えることなしに、バンチ長を大きく変えることが困難であった。また、線形加速器の制御用コンピュータも、運転パラメータのデータ保存に対応ができていなかったために、再現性に乏しい状況であった。このための対処として、昨年度から加速器制御系の更新・改良が行われた。この結果、一部を除いて運転パラメータの保存・再設定が可能になった。しかしながら、ビームを思うように制御するまでには至らず、当初の目標としていたビーム実験を行うことができなかった。現在、トラッキングシミュレーションを用いて、加速器内のビームの振る舞いを正しく理解することを進めている。さらに今後は、高品質の電子ビームを生成するための基礎研究を進めていく予定である。