Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
|
Research Abstract |
生理活性ポリエンに電子吸引性置換基を導入した極性カロテノイド分子は現存する有機化合物の中で最大の3次非線形性を示すことから注目を集めている。有機非線形光学材料の性能を最適化するためには,分子自身の非線形性を増大させることが重要ではあるが,結晶内における分子配列を制御することがより重要である。本研究の目的は,分子の固有振動をプローブとして結晶内における分子配列を支配している分子間相互作用力に関する知見を得ることである。その第一段階として,本年度は共役二重結合数n=1〜5の長さを持つ一連の生理活性ポリエン(レチナール同族体)の任意のオレフィン水素を単独に重水素で置換した化合物を合成し,光吸収・赤外線吸収・ラマン散乱分光測定と基準振動解析を用いた振動モードの帰属を行った。本年度の主要な研究成果は次の3つに要約される。一つは,都合何十段にもおよぶ有機合成反応を成し遂げたことである。特に,7位及び14位の重水素置換体に関して新規合成法を開拓し,特許申請を行った。二つ目は、選択的重水素置換により光吸収遷移における振動子強度の増減と置換位置による一定のルールを見出した点である。この発見は従来の物理学のフレームワークでは説明困難な新規な現象であり,その成果は諸学会において非常に高く評価されている。最後は、一連の選択的重水素置換レチナール同族体の赤外線吸収・ラマン散乱スペクトル測定と基準振動解析に基づく振動モードの帰属と言う緻密な研究を達成した点である。特に,選択的重水素置換により重水素に隣接する二重結合から単結合,場合によっては二重結合からメチル基への局所的な電荷移動が起こっている事を明らかにした。この結果はレチナール同族体の単結晶X線構造解析の結果によっても支持されている。上述の振動子強度の増減は選択的重水素置換により誘起された局所的電子構造の変化に由来すると考えられ,今後の理論解析が待ち望まれるところである。
|