Research Abstract |
Domany-Kinzelモデルは非平衡相転移を示す確率型セルオートマトンの代表例である.一次元格子の場合,座標xの格子状態σ(x)は0もしくは1の値をとり,時間発展はs=σ(x)+σ(x+1)で決る.σ(x)が1となる確率は,s=0,1,2のそれぞれに対して0,p, qであり,全ての格子点の状態が0である場合は,吸収点となる.Domany-Kinzelモデルの問題で最も重要な課題は,空間サイズと時間を無限大にした場合に,系の状態が吸収状態に落ち込む確率(生存確率)を求めることである. 昨年度の研究結果から,パラメターp, q空間での相図はほぼ明らかになったが,それは級数展開法によるものであり厳密な生存確率は現在も求まっていない.そこで,問題を単純にするためにDomany-Kinzelモデルの特殊な場合と見なせる方向性のあるパーコレーション(DP)について考察した. (1)昨年度,DPの浸透確率がFriendly walk(FW)の分配関数で記述できることを明らかにしていたが.FWの非交差の条件は必須の条件ではなく,交差を許す複数のランダムウォーカー(RW)が描く軌跡を数え上げることでも浸透確率,引いてはDomany-Kinzelモデル生存確率が求められることが分かった.つまり、Domany-Kinzelモデルの可解性はランダムウォークの可解性と深く関係しており、ランダムウォークに関する膨大な知識を活用してDomany-Kinzelモデルを解析していくとができることが明らかとなった.そこで,新たなアルゴリズムを考案しRWの統計的な性質を明らかにした. (2)歩行者の人数が2人の場合に描く軌跡の重なりを厳密に求め、その重なりに比例したエネルギーを有する系に対してカノニカル分布を厳密に計算し、分配関数に異常性が無いことを示した.
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