Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 2001: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2000: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
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Research Abstract |
緯度や高度といった環境勾配に沿った表現型の地理的変異パターン形成において,countergradient variation(CnGV)という現象が注目されている.CnGV(反勾配変異)とは,ある形質への遺伝的影響が環境による影響と逆行するような遺伝子型の地理的分布パターンのことである.魚類の成長率をコードする遺伝子型の緯度間でのCnGVをドキュメントするため,日本列島を南北に広く分布する淡水魚メダカ(Oryzias latipes)をモデルシステムとして,共通環境実験を行った.昨年度の調査地である,青森,茨城,兵庫,鹿児島,および沖縄の5地点に加え,岩手,新潟,および福井の3地点を加えた計8地点から本種成魚を採集し,実験室内で繁殖個体群として飼育した.各繁殖個体群から得られた稚魚の成長を20,25,28,32,および35℃の5段階の水温のもとで追跡し,成長率の水温に対する反応基準を各個体群毎に測定・比較した.その結果,昨年度同様,高緯度の個体群ほどどの温度のもとでも成長が速いことがわかった.成長を遅らせる寒冷な高緯度環境ほど高い成長率の遺伝子型が偏って分布するというパターンは,まさにCnGVの典型例である.また,成長率が最大になる温度は,どの個体群とも28℃で同じであることもわかった.これらの結果は,本種は北方に地理的分布を拡大する過程で,高緯度の寒さ自体には対抗せず,短い成長シーズンを補うべく効率よく成長を終えるよう適応進化を遂げたことを意味する.また,レントゲン撮影による骨格の形態解析の結果,高緯度の個体群ほど脊椎骨数が多くなる傾向も明らかになり,脊椎骨数と成長能力の機能的関係が示唆された.
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