Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
声道形状の簡単化の妥当性を調べるために,成人男性一話者の磁気共鳴画像(MRI)より得られた日本語5母音発声時の声道形状データをもとに,そのデータをできる限りそのまま利用して作成した声道モデルと,その形状を簡単化して作成した近似モデル内の音響特性をそれぞれ求め比較した。音響特性を得るために3次元の有限要素法(3-D FEM)を使用し,その結果から声道伝達特性を求めた。声道の曲がりの省略,および声道断面のだ円近似を声道形状の簡単化として選択した。さらに,声道壁が剛壁すなわち無損失の場合と,舌に相当する音響インピーダンスを持つ軟らかい壁の場合についても調べた。解析結果より,母音によらず,だ円近似モデルのホルマントには第3ホルマント前後からMRIデータをそのまま利用したものとの明確な差が生じ,5kHz以下のホルマントは高域側に存在することが示された。高域側にホルマントが存在するということは,だ円近似モデルの音響的な声道長が短く見えることを意味する。曲がりの省略については,だ円近似モデルに対して曲がりを省略しても,8kHzまではその影響がほとんど無いことが示された。一方,MRIデータをそのまま利用したモデルから曲がりを省略した場合,5kHz前後から曲がりを省略しない場合のものとの一致がほとんど見られなくなった。声道壁を剛壁とした場合,だ円近似モデルに対しては見られない鋭いピークが,MRIデータをそのまま利用したモデルの声道伝達特性に見られた。声道壁を軟らかい壁にしたところ、これらのピークは見られなくなった。これらの結果をふまえると,だ円を近似パラメータとして利用できるのは第2ホルマント周波数程度までで、だ円を近似パラメータとして用いている限り曲がりは省略してかまわないと言える。それ以上の周波数になると声道形状を近似することに問題があるか,別の近似パラメータが必要になると思われる。曲がりをパラメータとして用いるならば,5kHz以上の周波数領域ということになる。声道壁を剛壁とした場合に見られる鋭いピークが,実音声を分析することによって得られた周波数スペクトルには見られないことを考えると,剛壁として仮定することには問題があり,音響インピーダンスをパラメータとして与えなければならないと思われる。
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