Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
複数の異常がプラント内に同時に発生している状態下に置いて、「複合異常原因」に対応した符号付有向グラフを用いた異常診断システムは異常原因の候補を多数出力する場合が多く、診断精度が高いとは言い難い。そのため、実用的なレベルでの診断精度の事前評価を行うためには、診断精度を向上させる必要がある。そこで、昨年度は符号付有向グラフを用いた異常診断システムの診断精度を向上させるために、状態変数間の異常の伝搬時間を利用し、複合異常原因に対応したアルゴリズムを用いた診断法を開発した。本年度は、開発した複合異常原因対応アルゴリズムを用いて、異常診断システムの診断精度の事前評価法を開発した。事前評価の手法としては、プラント内に存在する測定器に対して組合せ的に表現可能なパターン(測定変数の値を、異常に高い…「+」、正常…「0」、異常に低い…「-」の定性値で表す)を生成し、プラント内で発生する可能性のある異常状態を全て列挙することにより、その診断結果の全候補集合の中から他の候補集合の部分集合にならない「最大候補集合」を求めることにより診断精度を評価した。最大候補集合の探索では、測定器の数が増えると診断回数が指数関数的に増加し、また、複合異常原因を考慮したアルゴリズムを用いると、単一原因のみの場合と比較してさらに診断回数が増加してしまう。そのため、今回は小規模なタンク8槽からなる配管系(測定器15個)を対象プラントとし、新たに複合異常原因対応の分枝限定操作を開発して複合異常原因対応の最大候補集合の探索を行った。その結果、単一原因と比較すると数十倍の探索回数が必要ではあるが、複合異常原因を考慮した最大候補集合を探索することによって、異常診断システムの診断精度の事前評価を行うことが可能となった。今後は、診断精度の事前評価法を利用した測定器の最適配置問題の解法への応用が期待できる。