Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究では、植物にストレスを与えている要因を、クロロフィル蛍光を用いて推定する可能性を検討するために、植物体内でのクロロフィル蛍光パラメータの分布およびその変化パターンと各種ストレスとの関係を調べることを目的とした。環境制御温室内において、水ストレスを与えたコーヒー苗のクロロフィル蛍光パラメータΔF/F'm (yield : PSIIの量子収率に対応)を、PAM方式携帯用クロロフィル蛍光測定装置を用いて、個体内の異なる葉齢の葉(上位葉、中位葉、下位葉に分類)において測定した。その結果、水ストレスを与えると、クロロフィル蛍光パラメータΔF/F'mの値が低下するとともに、個体内でのΔF/F'mの値のばらつきが大きくなった。また、正常な状態では、上位葉においてΔF/F'mの値が小さくなる傾向が認められたのに対し、水ストレス区では、中位、下位葉の方が小さくなり、明らかに個体内におけるクロロフィル蛍光パラメータΔF/F'mの分布パターンに変化が生じた。さらに、環境制御グロースインキュベータ内で水耕栽培したホウレンソウを用いて、高温ストレス、弱光ストレス、接触ストレス時のクロロフィル蛍光パラメータFv/Fm(PSIIの最大量子収率に対応)分布を調べたところ、高温ストレス時には、個体内におけるFv/Fm値のばらつきが大きなる傾向が認められたが、弱光ストレスでは、分布はほとんど変化しなかった。また、個葉に接触等によるストレスを与えた場合は、ストレスを受けた個葉のみのFv/Fm値が低下した。さらに、バレイショ培養小植物体においても、培地条件(ショ糖の有無)の変化によるクロロフィル蛍光パラメータFv/Fm分布の変化が検出された。以上のことから、受けるストレスの種類により、クロロフィル蛍光パラメータの分布パターンに違いが生じる可能性が示唆された。