プロスタサイクリンの新しいシグナル伝達系とその役割の解明
Project/Area Number |
12770066
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
General medical chemistry
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
波多江 利久 国立循環器病センター研究所, 薬理部, 室員 (10251026)
|
Project Period (FY) |
2000 – 2001
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2001)
|
Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2001: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
|
Keywords | プロスタサイクリン / PPARδ / アポトーシス / 生存率 / 細胞の運命 / ドミナントネガティブ / 核内受容体 / シグナルトランスダクション / Gタンパク共役型受容体 |
Research Abstract |
プロスタサイクリン(PGI)は、強力な血小板凝集作用および血管拡張作用を有し、血管壁表面での血栓形成防御など抗動脈硬化作用を示すなど心血管系制御および循環器系疾患に深く関与している。これらは主にGタンパク共役型受容体(IP)を介した作用と考えられている。また、一般に知られる作用の他に、PGIは痛覚への関与や細胞増殖抑制作用を有するが、これら新しいPGI作用がどのようなシグナルを介しているか十分明らかにされていない。一方、PPARδはPGI合成アナログ・カルバプロスタサイクリンにより活性化されることが知られているが、PGIは半減期が短く不安定であるため、実際にPGIがPPARδのリガンドと成り得るか不明だった。また、PPARδの生理的な機能には不明な点が多い。 これらの状況を背景として、本研究において、活性型PGIS遺伝子、あるいは不活性型PGIS遺伝子を導入し発現させたヒト胎児腎由来HEK-293細胞との間で細胞の生存率と形態に変化が生じることを見出した。さらに、内在的にPGISを発現している血管壁由来の培養細胞にシクロオキシゲナーゼ2型(COX-2)遺伝子を導入したところ、生存率の低下とアポトーシスを誘導すること、内在的にPGISの発現の認められないHEK-293にCOX-2遺伝子を導入しても生存率の低下とアポトーシスは誘導されないこと、しかし、これにPGIS遣伝子を共導入するとアポトーシスが誘導される現象が認められた。RT-PCRを用いた解析ではHEK-293細胞でのIPの発現は検出されず、また、細胞外からのPGI刺激もHEK-293細胞にアポトーシスを誘導しなかった。さらにアポトーシスに特徴的な細胞の形態変化を指標とし、アンチセンスおよびドミナントネガティブ型受容体等を作製し、本現象を誘導するPGIシグナル伝達経路を検索したところ、これまで内因性リガンドによる生理機能が全く不明だったPPARδの活性化を介した現象であることを見出した。 従来、PGIは細胞の生存率を上昇させる細胞保護活性を有することが報告されているが本研究で見出したアポトーシス誘導現象は従来の認識を全く覆すものであった。また、PGIの細胞保護活性がGタンパク共役型受容体を介した細胞内cAMP濃度の上昇の結果導かれる作用であること、今回見出した新しいPGIシグナル伝達系の作用は、細胞の生存について、Gタンパク共役型受容体を介するシグナル伝達系の作用と拮抗的に作用することを見出した。
|
Report
(2 results)
Research Products
(3 results)