Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
【目的】胃癌の発生におけるゲノム刷り込み現象の異常を明らかにすることである。今回、34症例の胃癌について、正常胃組織と胃癌組織から抽出したゲノムDNAとmRNAを用いて、IGF2,H19,IGF2R, p73,NOEYのloss of heterozygosity(LOH)とloss of imprinting(LOI)の解析を行った。、【方法】1.IGF2,H19,p73,NOEY遺伝子の検索:(1)ゲノムDNAの各々のpolymorphismを含む領域をPCRで増幅し、それぞれApaI, RsaI, StyI, HhaI制限酵素を作用させ、アガロース電気泳動後正常組織と癌組織とのパターンを比較してLOHの有無を判定した(PCR-RFLP)。(2)これらの遺伝子のcDNAに対し上記ゲノムと同じPCR-RFLPを行う。即ちmRNAを逆転写酵素により変換し、ゲノムで用いたPCR-RFLPの場合と同じ領域をPCRで増幅し、同じ制限酵素を作用させ、正常組織と癌組織の電気泳動後の切断パターンを比較してLOIの有無を判定した。2.IGF2R遺伝子の検索:(1)ゲノムDNAのIGF2R遺伝子に存在するACCAの4塩基多型を含む領域をPCRで増幅し、ポリアクリルアミド電気泳動後正常組織と癌組織とのパターンを比較してLOHの有無を判定した。(2)この遺伝子のcDNAに対しゲノムで用いたのと同じ領域をPCRで増幅し、ポリアクリルアミド電気泳動後正常組織と癌組織とのパターンを比較してLOIの有無を判定した。【結果】IGF2遺伝子:ゲノムDNAがheterozygosityを示す症例(informative case)は17例(50%)で、このうち5例(29%)はLOHを示した。ゲノム刷り込み現象はなかった。H19遺伝子:32症例中informative caseは18例(56%)で、このうち6例(33%)はLOHを示した。1例にゲノム刷り込み現象がみられ、LOIの現象が起こっていた。IGF2R遺伝子:informative caseは18例(53%)で、このうち5例(28%)はLOHを示した。1例にゲノム刷り込み現象がみられ、LOIの現象が起こっていた。p73遺伝子:informative caseは9例(26%)であったが、LOH、ゲノム刷り込み現象はなかった。NOEY遺伝子:17症例について検索したがいずれの症例もhomozygosity(non-informative case)であった。【考察】IGF2やH19遺伝子は染色体11p15領域に位置し、この染色体欠失がWilms腫瘍、肺癌などに高頻度に報告されていることから、これらの遺伝子のLOHが胃癌の進展にも意義があると思われる。IGF2Rは癌抑制遺伝子であることを考えるとこのLOHが胃癌の発生にある程度関与しているといえる。p73は肺癌に、NOEYは乳癌で多くの変異が報告されているが、胃癌では確認されず、臓器特異的ゲノム刷り込み変異があることが考えられる。今回、ゲノム刷り込み現象は少なくこの変異が胃癌に直接関与しているとは言い難い。
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