Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
放射線による癌治療に関して、アポトーシスの視点から見た放射線による細胞死の研究が開始され、放射線照射によるDNAの二本鎖切断に起因する増殖死細胞障害が解明されてきた。本年度は昨年度に引き続きさらに数種類の細胞を用いて、放射線照射後のアポトーシス細胞の検出および細胞周期の変化を解析した。アポトーシスに関する最近の報告を見ると、他の様々な因子の変動も全てアポトーシスの発現と密接に関連した事象であり、放射線基礎医学においては、ここ数年ではアポトーシスが最大のトピックである。放射線照射による細胞周期変動を見ると、放射線照射によりG2ブロックが起こり細胞周期が延長し、このG2停止期間の間にDNAの修復が行われるといわれている。本年度は数種類の細胞を用いて、放射線照射後のアポトーシス細胞の検出および細胞周期の変化を解析した。<方法>使用した細胞は、ヒト乳癌由来MDA-MB231、ヒト膀胱癌由来T24および、ヒト類上皮癌由来KB3-1で、ヒトT細胞リンパ腫由来のJURKATをapoptosisのコントロールとして用いた。今回、重粒子線は炭素粒子線を290MeV/uで用いた。ApoptosisはAPO2.7 monoclonal antibodyを用いて、flow-cytometerで定量した。<結果>MDA-MB231に対するX線照射後の細胞周期変化およびapotosis定量では、X線照射後、線量に依存してG2期細胞が増大した。Apotosis細胞は、線量に応じて増大するが15Gy程度の線量で50-60%に達し、その後は増大しない。この傾向は、今回用いた他の細胞(T24、KB3-1)でも同様に認められた。いずれの細胞でも15Gy程度で50-60%のapoptosisに達した後は線量を増大してもプラトーとなった一方で、コントロールとして用いたJURKATでは10Gy程度でほぼ100%のapoptosisを認めた。炭素粒子線照射後の効果は、X線照射後の効果とほぼ同様であった。線量に応じてG2-blockが増大し、またapoptosisは6Gy程度で50-80%に達し以後はほぼプラトーとなった。<まとめ>重粒子線照射後の突然変異発生頻度の違いの原因究明の為に、今回cell-cycle changeおよびapoptosis定量を行った。測定条件が微妙で、X線と炭素粒子線のみの結果しか得られなかったが、今回の検討から、apoptosis発現は線量に依存するが、その発生頻度は頭打ちになり、その際の線量はX線と炭素粒子線で3倍近い差異があることがわかった。