Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
平成12年度においては、ラットの臼歯を実験的に露出し、歯髄炎および根尖性歯周炎を惹起させて酵素組織学的ならびに免疫組織化学的に検索した。その結果、好中球およびマクロファージの浸潤が冠部歯髄から根尖部歯根膜に波及するとともに、根尖部歯槽骨における酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性細胞は増加する傾向にあった。平成13年度では、同様の過程におけるCGRPとSPの局在を検索し、それらが炎症過程において好中球およびマクロファージ、骨系細胞におよぼす影響を検討した。歯髄穿孔後7日:露髄直下の歯髄組織には好中球およびマクロファージが多数認められた。しかし根尖部歯根膜組織には好中球およびマクロファージは僅かしかみられなかった。根尖孔付近すなわち根尖部歯髄および根尖部歯根膜において、他部位と比べてCGRP陽性の細い神経線維の密度が若干増加していた。歯髄穿孔後14日:歯冠側1/2の歯髄組織は壊死に陥り、根尖側1/2の歯髄組織と根尖部歯根膜組織には7日よりも多くの好中球およびマクロファージが認められた。CGRP陽性の神経線維は根尖側1/2の歯髄組織と根尖部病変部において著明に増加しており、網目状に分布していた。歯髄穿孔後28日:歯髄は全体的に壊死に陥り、根尖部には膿瘍が存在し、根尖部歯根膜組織の炎症性細胞浸潤は14日よりも強くなっていた。好中球およびマクロファージは膿瘍周囲を中心に多数存在していた。CGRP陽性の神経線維も14日より密度が増加しており、膿瘍周囲の根尖病変全体に網目状に分布していた。歯髄穿孔後42日:CGRP陽性の神経線維は28日とほぼ同様に分布していた。全実験期間におけるSP陽性神経線維の分布はCGRP陽性神経線維とほぼ同様であったが、比較的密度は疎であった。CGRP、SP陽性神経線維の増加が好中球およびマクロファージと位置的、経時的関連を示したため、CGRPおよびSPは好中球とマクロファージを介して、または直接骨系細胞に作用している可能性が示唆された。