Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究の目的は、動物の歯に実験的歯周炎を惹起させ、固定の有無によって炎症がどのように進行するかを臨床的、レントゲン的に経時的に比較検討することである。岩川は、雑種成犬において歯周炎を惹起させてから4週までに1mm挺出したと報告している。この炎症に伴う挺出が固定によって制限され、炎症の進行に影響を及ぼすのではないかという仮説を本研究では前提として重要視している。本実験を行うのに先立ってビーグル犬においても同様に炎症によって挺出が生じるか否かを検証するため実験的歯周炎惹起後における歯の挺出量、PPD、PAL、角化歯肉、PTR、PTSを計測し健康な歯周組織を持つ歯と比較してみた。ベースライン時の実験的歯周炎惹起群の臨床データは、挺出量0.mm、PPD1.5mm、PAL3.5mm、角化歯肉5.2mm、PTR52.3、PTS1.4であり、健康群では挺出量0mm、PPD1.5mm、PAL3.5mm、角化歯肉5.1mm、PTR43.7、PTS0.7であった。実験的歯周炎惹起後12週の臨床データは、挺出量1.43mm、PPD3.7mm、PAL9.0mm、角化歯肉2.5mm、PTR141.3、PTS29.6であり、健康群では挺出量0.4mm、PPD1.3mm、PAL3.3mm、角化歯肉5.0mm、PTR48.9、PTS-0.11であった。実験的歯周炎惹起群におけるベースライン時と12週後の臨床データの比較ではすべての臨床パラメーターで有意差があったが、健康群ではなかった。また12週後における両群の比較ではすべてのパラメーターで有意差があった。さらに実験的歯周炎惹起12週後のレントゲン所見では約5mmの水平的骨吸収が観察された。以上の結果よりビーグル犬においても歯周組織の破壊を伴いながら歯が挺出していた。