Research Abstract |
変形性股関節症,臼蓋形成不全,大腿骨頸部骨折などの治療方法の1つとして人工股関節全置換術(THR)がある.この置換術は骨盤側に設置する臼蓋の設置角度により股関節の可動範囲が大きく左右される他,手術後の脱臼原因となることから,正確な臼蓋設置が望まれている.しかし,現在の手術手技においては,簡易ジグを用いて執刀医の目測で臼蓋の設置角を決定しているため,成績は必ずしも良好とは言えないのが実状である.そこで,本研究ではTHR手術の成績向上を図るために正確,簡便,短時間,安価な臼蓋設置角度決定装置の開発を行った. 本手術支援装置は計算などを行う装置本体と,実際に人工臼蓋の設置を行うデバイス部に大別される.デバイス部にはジャイロを固定し,このジャイロから得られる3軸の傾斜角と骨盤の姿勢を基に実際の臼蓋設置角を決定・挿入するシステムとなっている.また,ジャイロと骨盤との相対姿勢は2方向X線撮影によって得られた股関節部の画像データをDLT法により3次元化し,座標変換を行うことにより算出した. 本手術支援装置の有効性を検討するためにシステムの誤差を検討した.本システムに含まれる誤差は2方向X線撮影より得られた画像データを3次元化する部分と,ジャイロの有する角度分解能に集約される.ジャイロの有する精度は±0.5度であり十分な精度を有していると考えられたため,画像データを3次元化する際における誤差の検討を行った.そこで,既知の座標値を持つポイントについて本システムを用いて3次元座標を算出した結果,各軸方向により差異はあるものの誤差の平均は0.1〜0.5%であり十分な精度を有していることを確認した. しかし,実際の手術時において,解剖学的特徴点は今回の実験で用いたポイントのように鮮明にX線写真に写るとは限らず,担当医によっても特徴点の位置は一意に定まるものではない.従って,本支援装置の臨床応用のためには,これらの誤差についても十分検討を行う必要があると考えられ,今後の課題として残された.
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