Research Abstract |
固体触媒による不斉合成は,ポリスチレンなどの有機ポリマー表面に光学活性体を担持する不斉場構築により実現されている.しかし,反応溶媒による膨潤および溶解性,また熱安定性など諸問題がある.担体をシリカゲルにすることによりそれらの問題点を克服できるが,シリカゲルを用いた効率的な不均一不斉合成反応は,あまり知られていない.さらにシリカゲルとして均一な細孔径をもつメソポーラスシリカゲルを用いることにより分子サイズ認識も付与することが可能である.本研究では,単なる光学活性分子の担持ではなく,不斉鋳型分子の不斉情報をアキラルなビフェニル誘導体に転写後,除去回収する新規不斉転写法によりメンポーラスシリカゲル(FSM-16)表面に不斉場を構築することを目的に合成を試みた. 具体的には,鋳型分子として光学活性なビナフチルジカルボン酸を,不斉受容体として鋳型分子との結合部位とシリカゲルとの担持部位の両部位をもつアキラルなビフェノール誘導体を用いた組み合わせで,フェニル基間の単結合を固定することにより不斉を誘起させシリカゲル表面に不斉場を構築することに成功した.また,鋳型分子に光学活性なフェネチルアミン誘導体を,不斉受容体には鋳型分子との結合部位をビフェノールのヒドロキシル基からジフェニルホスフィノ基に換えたビフェニル誘導体の組み合わせの検討を行った.しかし,残念ながらビフェノールを出発物質とするビフェニル不斉受容体合成の収率が低く,BINAP類似の不斉場の構築には至らなかった.現在,別ルートによる合成を展開中である.
|