Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2001: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
シクロオクテンをはじめとする種々の炭化水素の選択酸化反応を行った.シクロオクテン,1-オクテン,2-オクテン,1-ヘキセン,シクロヘキサン,n-オクタンのターンオーバー数(TON)はそれぞれ10000, 2200, 2500, 1600, 135, 13であり,いずれにおいても反応は触媒的に進行した.基質がアルケンの場合,主生成物は対応するエポキシドであり,電子密度が低い二重結合を有する1-オクテンや1-ヘキセンでは,ターンオーバー数は比較的小さかった.以上より,Keggin型鉄二置換ポリオキソタングステートは,分子状酸素を酸化剤とした種々のアルケンの選択酸化反応に有効であることが明らかとなった. シクロオクテンのエポキシ化反応前後の触媒のUV-visスペクトルは,いずれも276nm(ε26000M^<-1>cm^<-1>)と336nm(ε8200M^<-1>cm^<-1>)にγ-Keggin型構造に特有のバンドを示していた.したがって,反応後も触媒はγ-Keggin型構造を保持していることが示唆された.また,反応前後の触媒のIRスペクトルもほとんど変化しなかった.以上より鉄二置換ポリオキソタングステートは本反応条件下で安定であると考えられる. シクロオクテンのエポキシ化反応はラジカル捕捉剤の添加による活性の低下が見られないこと,cis-およびtrans-2-オクテンのエポキシ化反応はラジカル反応におけるよりも立体選択的であることなどから,反応は主に非ラジカル的機構で進行していると考えられる.また,反応によって消費される酸素量は生成物量のほぼ1/2であること,^<18>O_2を用いてシクロオクテンのエポキシ化反応を行うと,96h後の反応溶液におけるH_2^<18>Oの生成量はシクロオクタノンの生成量と同程度でわずかであったことから,本反応系はジオキシゲナーゼ型で進行していると推定される.さらに,シクロオクテンと分子状酸素^<16>O_2との反応を96h行った後の触媒のIRスペクトルには,832cm^<-1>に鉄-オキソ種に帰属される吸収帯が観察された.この活性種に帰属される吸収帯はUV-visスペクトルでも614nmに確認できた.^<18>O_2を用いた場合には^<16>O_2を用いた場合と比べて832cm^<-1>のバンドは56cm^<-1>低波数へシフトし,776cm^<-1>に観察された.また,^<18>O_2を用いた場合の反応後の触媒とシクロオクテンとの量論反応を行うと,シクロオクテンオキシドがほぼ等量生成し,776cm^<-1>のピークが消失した.したがって,鉄-オキソ種が反応活性種であると考えられる.さらに,シクロオクテンのエポキシ化反応速度は触媒濃度,酸素分圧ともに1次に比例し,かつ酸素分圧1.0atm付近で極大を示した.したがって,この結果も反応には触媒が直接関与し,鉄-オキソ種がエポキシ化反応に寄与していることと矛盾しない.
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