Research Abstract |
脳から分泌されて脳下垂体から生殖腺刺激ホルモン(GTH)を放出させるホルモンとして発見されたGnRHが,白血球を含むさまざまな組織にも存在することが明かとなっており,生殖内分泌と免疫系とを結びつけるカギをにぎる分子の一つであると考えられる. コイのGnRHおよびGnRHリセプターのクローニングを行ない,末梢血,脾臓,頭腎から分離した白血球における各遺伝子の発現を調べた.その結果,sGnRH,cGnRHII,GnRHリセプターのいずれの発現も認められた.しかし,コイの染色体が倍数化しているため,各遺伝子には複数のタイプが存在し,それぞれ発現の組織特異性があるため,解析が著しく困難であった.GnRHに対する抗体を用いた免疫組織化学的検討の結果,好中球の顆粒が特異的に染色され,ペプチドレベルでGnRHの存在が確認された.一方,ニジマス白血球画分ではcGnRHIIの発現が認められた.しかしそのmRNAは第一イントロンを保存したままの変異タイプで,実際に機能しているかどうか明かでない.事実,免疫組織化学でも染色されず,ペプチドとしての局在は不明である. GnRHのin vitroでのコイ白血球の生残や抗体産成能に対する作用を調べたが,いずれも明確な変化は認められなかった.白血球に存在するGnRHリセプターに対するsGnRHの結合の指標としてFluo-3-AMを用いた細胞名カルシウムイオン濃度変化の測定をフローサイトメーターを用いて調べた結果,若干の上昇傾向は見られたものの明確な結果は得られなかった. 白血球,それも好中球にGnRHが存在することは,GnRHの炎症における役割を示唆するものであり,白血球自身にリセプターも存在することから,局所でのオートクライン,パラクライン的な作用が考えられ,今後,炎症や免疫との関連を調べていくことが必要である.
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