Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
ニューロンの極性は樹状突起と軸索への特異的な成分の選択的な運搬によって完成されるが,その機構は両極で異なる。樹状突起成分は樹状突起のみに運ばれて機能的な構築に組み入れちれる。他方,軸索成分の一部はひとまず樹状突起側に運ばれた後に排除される。現在,その排除機構の解明が大きな課題になっている。網膜のON双極細胞の樹状突起先端では,mGluR6(metabotropic Glutamate Receptor subtype 6)が生後数週間で局在化し,Gタンパクと連結して信号変換に関与する。視細胞から放出されるグルタミン酸を受容し,ON光刺激の脱分極性応答を伝えることがmGluR6の第1の機能である。そのノックアウトマウスでは,特徴的な軸索成分であるシナプスリボンと類似の構造が樹状突起に発現することが観察された。リボン様構造の異所性発現はmGluR6の代わりにionotropic GluRsをもつ正常OFF双極細胞の樹状突起でも,また,GαoのノックアウトマウスのON双極細胞でも起こった。以上の観察からmGluR6が第2の機能として,軸索成分の樹状突起からの排除に関与していることが示唆される。他の軸索成分について,免疫細胞化学的に調べたところ,Synaptophysin,SNAP-25,GAP43が樹状突起先端に異所性に発現することが電顕レベルで確認された。また,微小管関連タンパクである,Tau,MAP2についてもmGluR6が欠損すれば,細胞内分布に変化の生じることが光顕レベルで確認された。したがって,多種類の軸索成分について,mGluR6が排除因子として働くものと考えられる。アルツハイマー病において,Tauタンパクが細胞体から樹状突起にかけて異所性に凝集することが知られている。Tauタンパクを樹状突起から排除できないという機能不全の数十年間にわたる蓄積が,その神変性の基礎にあるかも知れないという新たな観点を,原因究明のために提供するものである。
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