Research Abstract |
魚類や円口類(ヤツメウナギなど)の体の両側にある側線は音を感じるセンサであることはよく知られている.また,このセンサは魚などのまわりの水の動きに反応しているのではないかという考えが提案されているが,このような観点からの研究例はほとんどない.もし,水の動きを感じることができるとすれば,流れのせん断応力あるいはせん断速度を計測可能なセンサとして利用可能になる.そこで,本研究では魚などの側線に存在する感覚細胞を取り出して培養し,流れ負荷の状態で魚の感覚細胞の特性を明らかにし,その応用についても議論することを目的とする. これまで報告されている感覚細胞を使った研究ではカジカが利用されているが,本研究ではカジカが入手困難のため金魚を使い,次の結果を得た. 1.金魚の側線感覚細胞の存在する部位から組織を切り出し,Ca^<2+>,Mg^<2+>を含まないハンクス液にコラゲナーゼとエラスターゼを含む溶液を作製して,組織を処理した.種々の濃度の組み合わせにより検討した結果,最適の濃度を見いだし,側線感覚細胞を単離することができた.単離後,細胞活性をトリパンブルーにより観察したところ,特に強い傷害も受けていないことを確認した. 2.感覚細胞を通常の細胞培養液中にて培養を試みたところ,2〜3日の培養は可能であるが,その後は急速に細胞活性を失っていくことを確認した. 3.感覚細胞をゲル中に包埋してせん断応力を負荷する装置にセットし,流れ負荷をかける実験を試みたが,細胞の活動度を電極を用いて定量的に評価する計測までには至らなかった.今後はこの点を中心に検討を進める予定である. 4. せん断応力負荷時の側線細胞の応答機構について有限要素法を用いて解析し,細胞内の変形と応力分布を得た.今後細胞内構造と応力分布の関係を検討する予定である.
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