日本語音声における非母語話者の時間構造知覚に関する研究
Project/Area Number |
12F02004
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
Japanese language education
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
荒井 隆行 上智大学, 理工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SONU Mee 上智大学, 理工学部, 外国人特別研究員
SONU Mee 上智大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2013: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2012: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | 時間構造知覚 / 促音 / 長母音 / 第二言語習得 / 聴知覚特性 / ラウドネス / 音韻時間長 / 学習メカニズム |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本語を母語とせず、かつ日本語を第二言語として学ぶ学習者(以下、学習者)を対象に、日本語の時間構造に対する知覚特性を明らかにすることである。言語の時間構造は一般的に言語によって異なり、外国語を学習する際、1つの障壁になっている。そして、日本語を外国語として学習する場合、学習者の第一言語の時間構造知覚の特性や、学習者が日本語の時間構造をどのように知覚しているのかについては、まだその全貌が明らかになっていない。そこで本研究はまず、日本語と韓国語の子音を中心に時間構造に対する知覚特性を調査した。さらに、日本語と異なる時間構造を持つ言語を第一言語とする学習者にとって、日本語音声を聴取する際にどのような問題が生じるのかについて調査した。最後に、これらの問題に対し、時間構造知覚に影響を与えるとされる「聞こえの大きさ(ラウドネス)」を中心に、学習者の知覚特性について検討した。その結果、同じ発話速度の条件下では、日本語の促音と非促音という子音対立に対する知覚境界が、韓国語の語中における平音と濃音という子音対立に対する知覚境界より長い時間長を要することが分かった。このことは、韓国語母語話者が韓国語の語中子音を知覚するように日本語の子音対立を知覚判断した場合に非促音を促音として判断する、いわゆる「促音へのバイアス」が生じ得ることを示している。実際、日本語の長短音素の聴取実験では、異なる発話速度において、非促音を促音として判断する結果が見られた。この促音への知覚バイアスはその修正が難しく、聴取訓練を行ってもその効果が限定的であった。その主な原因として、音韻時間長を知覚する際に注目する知覚単位が異なる可能性があげられる。今回の分析結果では、韓国語母語話者は促音と非促音を知覚する際に、先行母音の聞こえの大きさによって判断しているという結果を得た。今後、知覚特性を考慮した時間長知覚をより綿密に分析することによって、学習メカニズムの解明につながるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、人間の聴知覚特性に着目し、非母語話者による日本語音声の時間長の知覚特性を把握することが目的である。特に、本研究では音の物理的な時間長だけではなく、感覚的な音の大きさを考慮し、日本語学習者における知覚特性の解明を試みた。その結果、学習者は日本語母語話者とは異なる時間構造知覚特性を用いることが確認された。さらに、この時間構造に対する知覚特性の差において音響心理尺度であるラウドネスがその解明の一変数になり得る可能性が示唆された。この結果は従来の学習者による日本語の誤用の把握だけではなく、時間知覚の学習メカニズムの解明にも大きく貢献するものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究成果から、次のことが分かった。1)言語の時間構造知覚には差がある、2)外国語の学習時に母語の時間構造を適用することで、日本語に対して知覚バイアスが生じる原因になる、3)時間構造知覚の差は時間長を判断する際に影響を与えるラウドネスを利用することで、言語特有の時間構造知覚を解釈することができる。今回、得られた結果に基づき、日本語の音声学習にどのような影響を与えるのかをさらに調査、分析を広げていく。特に、日本語のプロソディー知覚と学習、時間構造知覚が生成に与える影響、生成にみられる時間長制御特性との関係について研究、調査をする予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)