Research Abstract |
初年度の最重要課題として実施を予定していた,実物大橋梁・列車による同期計測を予定よりも早く実施するが可能であった.また,その後に予定していたARモデルの非定常領域への理論拡張,実装,および検証についても平行して実施できた.さらに,橋梁の固有振動数の変動評価において非常に有用な結果を得ることができた.実物大試験線での橋梁・列車の同期加速度計測により,GPS時刻信号の位相を利用した実物大列車・橋梁同期計測手法を構築し,実物大試験線においてその有効性を検証できた.また,橋梁通過中と他構造物通過中の卓越振動数の分布を比較することにより,モード6(82.4Hz)が橋梁通過中の車軸加速度の卓越成分形成に寄与していることが判明した。さらに,それらの卓越成分は列車の速度や進行方向,着目する車軸に依らず安定して励起されることを確認した.一方で,締結装置間隔や車軸間隔の影響により,橋梁のモード1をはじめとした50Hz以下の低次モードの抽出は本研究の分析では困難であった.振動特性の変動評価に関しては,固有振動数の見かけ上の変化を表現可能なモデルとして,時間領域における同定手法の一つである多変量自己回帰モデル(Vector Autoregressive Model : VAR)に時間的変化(Timevarying : TV)を許容したTV-VARモデルを導出した.また,実測応答に基づくTV-VARモデルの同定手法として,階層ベイズ推計により未知パラメータを推計する手法を構築した.さらに,提案手法を数値シミュレーション時系列に適用し,固有振動数の変化を精度よく評価することが可能であることを確認したうえで,実際の列車走行時の橋梁加速度応答にTV-VARモデルを適用し,列車走行時の橋梁の固有振動数が実際に見かけ上低下していることを確認した.
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