Research Abstract |
本研究は、最も毒性の強いダイオキシン異性体2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(2,3,7,8-TCDD)を分解する好気高温菌Geobacillus thermodenitrificans UZO 3株の分解機構を解明し、分解酵素遺伝子をクローニングすることにより、科学的に認知される2,3,7,8-TCDD分解酵素研究を確立することを目的とした。 今年度は、G.thermodenitrificans UZO 3株の細胞抽出液による2,3,7,8-TCDD分解能をGC-MS分析で解析した。その結果、G.thermodenitrificans UZO 3株の細胞抽出液は2,3,7,8-TCDDのジアリールエーテル結合を順次還元的に開裂し、分解中間体として3',4',4,5-tetrachloro-2-hydroxydiphenyl ether(TCDE)を経由し、3,4-dichlorophenol(DCP)へと変換するこれまでに例のない新規の酵素機能を有していることが示された。 さらに、2,3,7,8-TCDD分子内ジアリールエーテル結合還元開裂活性の高感度検出系を開発した。ダイオキシンをはじめとする環境化学物質に関する研究において、通常の機器分析法では、繁雑な抽出操作を必要とするため分析誤差範囲が広く、信頼性のある情報を得る事が難しい場合があった。この問題を解決するために、高感度で簡便な、かつ人体に無害なアッセイ法を開発した。本研究で合成した蛍光アナログ基質は、ダイオキシン類似構造部分と4-methylumbelliferone(4MU)構造部分から構成される。G.thermodenitrificans UZO 3株の細胞抽出液に含まれる2,3,7,8-TCDD分子内ジアリールエーテル結合還元開裂酵素が、蛍光アナログ基質の分子内ジアリールエーテル結合も還元的に開裂し、強力な蛍光を発する4MUを遊離したことが示された。
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