戦間期ドイツにおける暴力の経験とナチズム -義勇軍戦士の思想と行動を中心に-
Project/Area Number |
12J00657
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
History of Europe and America
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 宏昌 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2013: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ドイツ現代史 / 暴力 / 経験史 / 軍事史 / ナチズム / 内戦 / ヴァイマル共和国 / パラミリタリー |
Research Abstract |
2年目となる平成25年度は、前年度にドイツで収集した史料や文献の読解と研究方法の確立に専念した。 研究成果としては、雑誌論文を2件公刊し、学会発表を1件おこなったほか、図書1件の刊行に携わった。雑誌論文「書評 石田憲『ファシストの戦争――世界史的文脈で読むエチオピア戦争』(千倉書房、2011年)」は、ドイツ義勇軍研究や経験史研究の立場から、第一次世界大戦や植民地での暴力経験をもつイタリア・ファシストや、国際義勇兵たちのエチオピア戦争を描いた石田憲氏の最新の著書を論評したものである。結論としては、本書がエチオピア戦争をめぐる複数の主体の動向と彼らの背負う歴史、そしてその相互関係を克明に描き出した点、さらにそれを軸として、イタリア・ファシズム体制の終わりの始まりや国際的な反ファシズム・反帝国主義運動の胎動など、近現代世界史の構造的変化を明らかにした点を評価した。このようにミクロな主体とマクロな構造とを架橋しようとする石田氏の研究姿勢は、博士論文を叙述するうえで大いに参考になった。また雑誌論文「文書館訪問記 ヴァイマル期ドイツ義勇軍をめぐる旅とドイツ各地の文書館」は、前年度におこなったドイツ各地の文書館における調査の概要を活字化したものである。その成果は学会発表「ヴァイマル期ドイツ共和派における義勇軍運動の経験史―ユリウス・レーバーを事例に―」に結実した。そこでは、ドイツ社会民主党員であるJ・レーバーの半生において、ドイツ革命期(1918/20年)における物理的肉体的な暴力の経験が、その後のドイツにおける政治危機の先鋭化と絡み合う形で「共和国の防衛」意識を覚醒させ、右翼急進派やコミュニズム、そしてナチズムとの対決姿勢を鮮明化させた点を確認することができた。 以上の研究は、ヴァウマル初期における義勇軍経験を主体と構造の相互関係という観点から分析するという研究方法の確立につながり、平成26年度中に提出予定の博士論文の執筆も大幅に前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史における経験、とりわけ暴力の経験を歴史学的に解明するための研究方法はある程度確立されたものの、具体的な実証の段階でさまざまな困難が生じた。特に新史料の読解を通じ、これまでそのナチ党への入党が疑問視されてきた義勇軍戦士A・L・シュラーゲターが実際にナチ党員であった可能性が高くなり、その点で博士論文の章構成と議論の大幅な組み替えが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では義勇軍出身のナチ突撃隊指導者であるW・シュテンネスも分析対象とするはずであったが、「11. 現在までの達成度」でも述べたように、A・L・シュラーゲターがナチ党員であった可能性が高くなったことから、現時点ではシュテンネスに関する研究を保留にし、シュラーゲター(=ナチ)、J・レーバー(=共和派)、J・B・レーマー(=コミュニスト)の三人の義勇軍戦士を軸に、ヴァイマル初期の義勇軍運動とその経験が政治的にいかなる意味をもっていたのかを分析している。報告者は平成26年度から平成28年度まで「戦間期ヨーロッパにおける内戦と義勇軍運動の経験史的研究 : 独露間の往還関係を中心に」と題する研究テーマで日本学術振興会特別研究員(PD)に採用されることが決定しているため、今後はその枠組の中で、シュテンネスの個人史およびヴァイマル末期における義勇軍経験について検討する予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)