Research Abstract |
「研究の目的」 本研究の目的は,抗がん剤を効率的にがん細胞へ輸送するシステムの確立である.これまで行われてきた方法として,カプセルを用いた方法が検討されてきた.カプセルにがん細胞と相互作用するタンパク質を修飾し,がん細胞選択的に抗がん剤を輸送する方法である.ほとんどの研究において,そのタンパク質とがん細胞の相互作用は広く議論しているが,カプセル自身の特徴に着目し,がん細胞とカプセルとの相互作用を議論した研究はほとんど行われていない.本研究は,カプセルの膜特性に着目し,カプセル自身が持つ,がん細胞との相互作用の強さを検討した. 「研究成果」 がん細胞に対し,異なる膜特性を有するカプセルを添加し,その取り込み量を評価した.その結果,柔軟な膜構造を有するカプセル(Span80ベシクル)を多く取り込むことが明らかとなった.一方で,固い膜構造を有するカプセル(リボソーム)はあまり細胞に取り込まれなかった.さらに,カプセルの取り込み経路について議論した.リボソームはエンドサイトーシスという細胞が物質を取り込むメカニズムにより取り込まれることが明らかとなった.エンドサイトーシスの場合,抗がん剤が細胞全体に行き渡りにくい.一方で,Span80ベシクルは膜融合により,がん細胞へと取り込まれている可能性が示唆された.膜融合の利点として,抗がん剤を直接、細胞質へ送達することが可能である.従って,抗がん剤を細胞全体へ拡散させることが可能である.実際に,リボソームとSpan80ベシクルの場合で,抗がん活性を評価したところ,Span80ベシクルの方が、より高い抗がん活性を示すことが明らかとなった. 「意義・重要性」 既存の研究では,カプセル自身の特性にはほとんど言及されていない.しかし,本研究では,カプセル自身の特性の重要性を示すとともに,どのような特性のカプセルが細胞との相互作用に有利であるか,という指針をしめすことが出来た.
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