Research Abstract |
本研究では,自己組織的に動作する複数のネットワーク制御を階層的に用いる場合について,階層間での相互作用のさせ方の違いと得られる性能や特性の関係を評価,分析することで,自己組織型ネットワーク制御における階層型制御のあり方を明らかにすることを目指している. 本年度は,自己組織的に動作する適応型経路制御を階層的に組み合わせるときの,階層間の相互作用の影響について検討した.具体的には,無線ネットワークと,その上に構築されたオーバーレイネットワークのそれぞれで,生物システムの環境変動に対する適応的な振る舞いを説明した数理モデルであるアトラクタ選択モデルにもとづく適応型経路制御が動作する場合について,アクティビティと呼ぶ経路の良さを表す制御指標を共有させることで,階層間を明示的に相互作用させた.そして,相互作用のさせ方として,双方の階層の制御が互いに独立して動作する場合に加え,上位層が下位層のアクティビティを考慮する場合,下位層が上位層のアクティビティを考慮する場合,双方の階層が他方の階層のアクティビティを考慮する場合の4種類について,ノード故障が発生する環境において,相互作用のさせ方の違いが,経路変更回数や経路長,メッセージ到達率,通信遅延,経路収束時間に与える影響を評価した. 評価のために,ネットワークシミュレータであるNS3を用いて経路制御を実装し,これらの4つの相互作用について,シミュレーションを行った.シミュレーションにより,下位層が上位層のアクティビティを考慮した制御を行うことで,独立に動作する場合と比較して,経路回復期間における経路の安定性やメッセージの到達率は低下するものの,いずれの相互作用と比較しても,ノード故障に対してエンド間通信遅延の小さい経路に短い時間で回復できることを確認した.
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