Research Abstract |
不適切な灌漑水の制御と作付け体系によって引き起こされる土壌や地下水の塩類化の問題が発生している砂漠化進行地域において, 生物的および物理的手法による根圏の適切な塩類動態制御に基づく, 持続畑作管理技術の確立が急務とされている。そのためには, 土壌中の物質移動解析の精度を向上させ, 予測の再現性を向上させることが重要となる。本年度では, 値生を変えることが土中の水分・塩分環境にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために, 中国の乾燥地に位置する塩類化が進行している実験圃場において, 現地の主要作物であるトウモロコシ, 耐塩生作物として塩害農地でも持続的に栽培が可能で, 除塩が期待されるビート, ヒマワリ, エンバクの栽培区を設定した。各栽培区において, 物質移動解析結果と比較・検証することができる情報を得るため, その成長に伴う土中水分・電気伝導度(EC)の経時変化をTDT (time domain transmissometry : 時間領域透過法)センサを用いてモニタリングした。また, 5月, 7月, 10月に採取した植物, 土壌サンプルに含まれていた主要なイオン(ここでは, Na^+, Ca^<2+>, Mg^<2+>, K^+, Cl^-, NO_3-, SO_4^<2->)を分析した。その結果, 現地圃場では作付け期間全体を通して, 植生間の水分量の明確な差違は確認できなかった。これは, 浅部地下水面が年間を通して形成されたことから, 植生ごとの蒸発散フラックスに応じて, 安定的に水分が供給されたことによるものだと考える。一方で, EC値については, 全ての栽培区で上昇傾向がみられた。これは, 前年度同様にRhoadesら(1976)が示したモデルから推定した土壌溶液EC値から, この変化が土壌水分の増加によるものではなく, 塩分濃度の上昇によるものであることを明らかにした。さらに土壌・植物サンプル内に集積したイオンの分析の結果, トウモロコシとビートの間には, 根によるNa^+吸収量に明確な差があり, そのことが土壌表層におけるNa^+の集積量に顕著な差をもたらすことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進方策として, 以下のことを計画している。 1. 現地調査により土壌・植物サンプルを蓄積する。 2. 必要な土壌サンプリングを実施し, 土壌の水分保持特性や溶質の移流分散特性を室内実験で明らかにし, 水分移動解析の精度向上, 溶質移動解析のパラメータの推定および精度向上を図る。 3. 継続的に作物栽培を実施し, 中長期的な塩類化土壌への影響を調査する。 4. 取得データを随時分析する。
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