フランスのコンテンポラリーダンスにみる政治、美学、歴史についての研究
Project/Area Number |
12J04197
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
芸術学・芸術史・芸術一般
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
越智 雄磨 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員DC2
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2013: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2012: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | グザエヴィ・ル・ロワ / ヴォンヌ・レイナー / 舞踊 / コンテンポラリーダンス / ニコラ・ブリオー / 関係性の美学 / ノン・ダンス / 共存 / グザヴィエ・ル・ロワ / ジェローム・ベル / 劇場 / 遠近法 |
Research Abstract |
今年度は、フランスで1990年代以降、ノン・ダンスと呼ばれる新しい舞踊の傾向を担った振付家グザヴィエ・ル・ロワから提供を受けた作品映像資料すべてに目を通し、この振付家の作品群からみられるchoregraphie(振付)概念の変遷について研究を行った。 1994年のデビュー作品『Narcisse Flip』をはじめとして、『Self unfinished』(1998)、『Produit de circonstance』(1999)、『Sans titre』(2005)、『Sacre du printemps』(2007)、『low pieces』(2011)を通して分析、考察を行った。ル・ロワ自身の創作に関する発言や、イヴォンヌ・レイナーの証言と私自身の考察を照合した結果、米国の舞踊研究者スーザン・レイ・フォスターの振付の分類に依拠するならば『Narciss Flip』においては、1920年代以降に成立したアメリカのモダンダンスにみられた「自己証言としてのコレオグラフィ(choreography as testifying)」に基づいて構成されていることが明らかになった。それは振付家が独自の身体原理やムーブメントを開発し、それを通して作者自身の精神性や内面を表現することに最終的な目的が置かれているタイプの「振付」である。 しかしながら、『Produit de circonstance』以降の作品では、ル・ロワは、長らく芸術としての舞踊の世界で主流である自身の内面や精神性の動きによる表現よりも、観客の自発的な行動や主体的な参加を促すことに重点を置くようになっていることが明らかになった。これらの作品においては、作者が意味を生産し、観客がそれを解釈するという非対称的な関係性が放棄されており、観客の意思や決定、主体的な作品への参加が作品の意味の形成にとって不可欠な要素となっている。これらの作品において、観客は作品の中における自身の在り様について交渉する余地を持っており、ニコラ・ブリオーによる「関係性の美学」や「共存の基準」といった概念に接近していることがわかった。ル・ロワの振付の本質は「自己証言」から「共存」に移行していると言え、90年代以降のダンスの傾向の変化が何であったのかという当該研究分野の課題に一つの回答を示すことができた点に、本研究の意義があったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究指導委託により、研究指導を担当していただいたジュリー・ペラン准教授(パリ第八大学)の指示のもと、課題となっていた振付家グザヴィエ・ル・ロワの振付概念の変遷についての研究を行うことができた。その結果、従来の研究によく見られたポストモダンダンスの延長線上にル・ロワを位置づけるパースペクティヴとは異なる視点を提示することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1990年代以降に現れたとされる舞踊の新しい傾向であるノン・ダンスについての研究を今後進めるためには、1980年代以来、フランスにおけるコンテンポラリーダンスの美学にも多大な影響を与えたとされるダンス支援政策や制度の変遷をより深く研究する必要がある。また、ル・ロワとならんでノン・ダンスの代表的な振付家とされるジェローム・ベルの近年の作品についても研究する必要がある。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)