現代フィジー社会における環境保護と伝統言説についての人類学的研究
Project/Area Number |
12J04381
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Cultural anthropology/Folklore
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
浅井 優一 立教大学, 異文化コミュニケーション研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2013: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | フィジー / 神話 / 歴史 / 文書 / 首長制 / 言語学 / テクスト / 環境 / 儀礼 / コスモロジー / 談話分析 / 環境保護 / 引用 / 憑依 |
Research Abstract |
本研究は、フィジー諸島のダワサム地域住民によって行われたFLMMA (Fuji Locally-Managed Marine Area)と呼ばれる環境運動の導入は、「保護の対象としての環境」という新知識/新秩序を受容することが、崩壊しつつある地域の「伝統的秩序」を復元する行為として実現したことを示唆し、フィジーで展開する環境保護の活動が、今日のフィジーを特徴付ける文化的認識の枠組みの中で生起する事象である点を明らかにすることを目的としたものである。2013年度は、こうしたダワサム地域におけるFLMMA導入の基底を成したフィジーにおける神話的世界観の史的変容に関する論文の執筆を行った。 当該論文は、フィジー諸島における2つの神話テクスト(植民地期の文書、過去の語り)の形式を比較対照した。1930年に植民地政府が作成した文書では、各氏族が移住の過程で連帯し、最高首長を拝して地域を形成したこと、っまり、首長を頂点とした集団間の階層や、支配―従属の関係が前景化した形式(hypotaxis)によって地域の過去が記述されている。他方、今日ダワサム地域で一般的である長老等によって為される過去の語りは、複数の氏族によって形成される地域が前提とされ、そこに首長が外部から到来することで地域が創られたこと、つまり、首長と各氏族、そして氏族間の排他性/並列性が前景化した形式(parataxis)によって地域の過去が語られる。以上の考察を経て、こうした神話の形式の変容は、文書化された神話や語りの中で喚起される過去それ自体ではなく、神話や過去について語る主体自身に社会文化を秩序化する権威があること、つまり、「今ここ」に過去/神話の所在が見出されていると論じた。 以上の考察を通して、これまでオセアニア文化研究における中心的な議論対象となってきたフィジーの神話と歴史に関する事象を、詳細な言語学的分析を十全に取り入れて正面から扱った研究であり、その点でオセアニア文化研究において、新たな視点を提供できた点に意義が見出せる。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Report
(2 results)
Research Products
(20 results)