Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2013: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
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Research Abstract |
本研究の目的は, 予期せぬ変化や外部環境の変化に柔軟に対応することを目指す適用型交通計画の構築を念頭に, 計画に付随する不確実性を制御する具体的な手立てを検討することにある. 本年度は, 昨年度の研究にて指摘した計画目標の変化に付随する不確実性について, 指標選択の観点から分析を進めた. 第一に, 指標選択に関する研究を網羅的にレビューした. その結果, 指標選択においては, 1)計画理念・目標を定める際に拠り所となる規範原理との整合性を考える必要があり, 純粋に技術的・科学的な問題として指標を選択すべきではないこと, 2)一方, 実際には指標選択の背後にある規範を明示することは少なく, 実際の計画目標とは整合しない指標を使用しているケースが頻繁にあること, 3)計画目標設定の前提となる規範は経年的に変化し得るものであり, 従って適切な指標も経年的に変化し得ること, などが明らかとなった. 第二に, 交通事故リスクの指標選択を例に, 既存指標と計画目標との剥離を指摘し, 代替指標を提案した. 具体的には, まず, 既存のリスク指標(事故数/自動車総走行距離)は, a)モビリティの確保を交通計画の第一義的な計画目標に据えた場合に整合的な指標であり, アクセシビリティを重視する現在の計画理念を念頭に置いた指標ではないこと, b)自動車利用者の事故リスクのみを分析の対象としており, 例えば公共交通の促進による事故削減効果を適切に評価できないこと, を指摘した. 次に, 上記の問題点を踏まえた代替リスク指標として, 交通システム全体の事故リスク指標を提案し, 米国のデータを用いた実証分析を行い, 指標の選択が政策評価に大きな影響を与えることを示した. 第三に, 東日本大震災直後に起きた節電行動を評価する際の指標選択に関して議論した. 結果, 交通事故リスクの議論と同様に, 分析の境界線の引き方によって結果が大きく異なって見えることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の報告書に記載したように, 倫理的規範の経時的な変化等が交通計画の不確実性と深く関わっていることが判明したため, その点を踏まえた分析を本年度は実施した. 新たに浮かび上がった問題に専念したため, 当初の計画にあった方法論的検討は大きくは進まなかったものの, 規範的な問題である計画目標の設定と記述的な問題である指標選択を関連付けて議論した本年度の研究成果は, 価値観の変化により生じる不確実性を制御していく上で極めて重要と考えている.
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