Project/Area Number |
12J09118
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 健太 東京大学, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012 – 2014-03-31
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Project Status |
Declined (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2013: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2012: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Keywords | フラストレーション / スピンアイス / 磁気モノポール / パイロクロア / 磁気誘電性 |
Research Abstract |
本研究は、新しい量子状態として期待される量子スピンアイスの実験的解明を目指している。その候補物質として、Prをベースとするパイロクロア磁性体Pr_2Zr_2O_7に着目し、単結晶の純良化と詳細な物性測定を行った。 本研究実施前において、FZ法により作製した単結晶の物性に強い試料依存性があることが分かっていたが、その主要因の特定には至っていなかった。そこで、出発原料の組成比および育成条件の精密制御を行い、得られた単結晶の化学組成分析、構造解析、マクロ基礎物性の系統的測定を行った。その結果、Pr濃度と各物理量(ワイス温度や低温比熱)に明瞭な相関があることを見出した。一方、いくつかの試料で見られた数%オーダーの過剰酸素は、系の物性に顕著な影響を与えない。これらの結果は、Pr濃度が物性を支配する主要因子であることを意味しており、単結晶純良化に向けた重要な指針を得ることができた。 この指針に従って純良単結晶を育成し、最低温度20mKまでの直流磁化,交流帯磁率,比熱の精密測定、さらには、Johns Hopkins University(米国)・Broholm教授グループとの共同研究による単結晶中性子散乱実験を行った。その結果、長時間スケールにおけるスピンアイス相関に加え、psオーダーの高速ダイナミクスの直接観測に成功した。 これは、本系が量子揺らぎを伴った新しいスピンアイス状態、すなわち、量子スピンアイスを形成していることの実験的証拠である。この成果は、Nature Communicationslこ受理された。 次に、最低温度20mKまでの誘電率測定から、従来の古典スピンアイスに比べて顕著に大きい磁気誘電結合を見出し、Pr4f軌道と酸素2p軌道の混成が強いことを明らかにした。これは、本系の量子揺らぎが、量子力学的な超交換相互作用を介して導入されていることを強く示唆する。さらに、誘電緩和がモノポールダイナミクスを反映することを見出し、モノポールが電気的手法により検出可能であるという重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたPr_2Zr_2O_7単結晶の純良化が大きく進展し、この物質が実際に量子スピンアイス状態を形成していることを実験的に明らかにした。一方、その他の量子スピンアイス候補物質の単結晶純良化・大型化については、計画通りの進展は得られていない。しかしながら、希釈冷凍機を用いた誘電特性測定装置の立ち上げに成功し、これにより、磁気モノポールのダイナミクスが誘電特性に反映されるという、当初の予想を上回る大変興味深い成果を得ることに成功した。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年4月30日を以って、貴会の特別研究員を辞退し他研究機関に異動する運びとなった。それにより、本研究課題の継続が不可能になってしまったことを、ここにお詫びしたい。本年度中の研究成果は既に2報の学術雑誌に掲載されることが決定済みであるが、他にも未発表かつ重要な研究成果が残っている。これらを学術論文の形にまとめて発表することに注力したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)