農業新規参入者のキャリア形成と家族生活に関する実証的研究
Project/Area Number |
12J10095
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Agro-economics
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高津 英俊 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2013)
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Budget Amount *help |
¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2013: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 新規参入農業者 / 初期キャリア / M-GTA法 / 質的研究法 / 適応プロセス / イーミックな視点 / メンタリング / サポート |
Research Abstract |
本研究の目的は、新規参入農業者の定着要因に関して、職業生活への満足感や仕事と生活の調和が、長期的な定着と経営成長に結びつくという仮説を検証することにある。その第一歩として、本年度の研究ではキャリア論の観点から、新規参入農業者の定着過程の解明に取り組んだ。 農業への新規参入は、新たなキャリアへ踏み出すことであり、期待と現実とのギャップ克服や地域・農業社会への適応などの課題に直面する。そこで本年度は、新規参入者がこのキャリア局面において、どのような経験をし、どのような課題に直面するのかを研究課題として、新規参入者13名(昨年11名・本年度2名)へのインタビュー調査の実施と分析によって課題への接近を試みた。分析方法として、農業経営学分野では極めて適用事例の少ない修正版グランデッド・セオリー・アプローチ法(M-GTA法)を採用した。M-GTA法を含む質的研究法の特徴は、イーミックな視点(内部者視点)から現象の構造を解明することであり、本研究でも新規参入者の初期キャリアの形成過程を、当事者視点から明らかにするために同手法を採用した。 分析の結果、以下の3点が分かった。第1に、前職の職務や組織への不満を背景に〈生き方の問い直し〉が起こり、就農意思が生成される。第2に〈就農情報の探索行動〉や〈農業研修による現実の受容〉により、「農業=きつい」という前提が形成されるが、就農後は想像をしのぐ過酷な現実に直面する。第3に、就農後は多額の借入や技術の未確立を要因とした焦燥感と対峙する。この焦燥感が原因で、関係者との衝突を経験しながら、農業地域社会の文化を受容し始める。 本研究の実施により、農業経営研究における質的研究法の有効性を示すとともに、新規参入者によるコンフリクトの発生要因を解明することができた。今後は、更なる研究の蓄積により、新規参入者のサポート・システムの検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」と判断したのは、25年度中に上記の研究内容を論文化し、学会誌投稿を目指していたためである。遅れた要因としては、当研究で採用した研究手法(修正版グランデッド・セオリー・アプローチ)が、報告者が所属する農業経済学分野では適用事例がなく、一から習得する必要があった。このため多くの時間を要したが、本研究が論文化され、広く公開されることで当該分野に新たな分析視角を提供し得ると確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、今年度中の学会誌への論文投稿を目指し、再分析を進めている。研究発表を行った「地域農林経済学会・近畿支部大会」で頂いたコメントや指導教員からの指摘等に基づいて、大幅な修正を実施している。完成した研究成果は、農業経済関連学会(研究会)のみならず、他分野の研究会(例えば、M-GTA研究会)等で報告し、多面的な意見を受け、さらに当該研究の精度を高めていきたいと考えている。 同研究とともに、昨年度実施した文献・資料調査の結果を合わせて、今年度は学位論文の執筆を進めて、今年中に提出したいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)