Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2002: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2001: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
|
Research Abstract |
本研究はギリシア神話の特質を口承伝統や民族的基盤を離れて創造的活力を保持した点に認める視点から、ギリシアからローマ,さらに後世の西欧文明へと,異文化間の伝承の大きな継ぎ目をなしたラテン文学に着目し,そこでの神話を題材とした叙述技法を観察・検討することを通して,ギリシア神話の伝承について本質的様態に考究することを目的として掲げた.序歌の提示と主題の展開,モチーフの変化,カタロゴス(katalogos, catalogue),遅延(retardation)といった技法に注目する一方,ウェルギリウス「アエネーイス』とオウィディウス『変身物語』の二作品を中心的な考察対象として取り上げた. 主要な研究成果としては,古典テキストの再検討という基礎的作業の一部として,(1)ウェルギリウス「アエネーイス』の原典訳および解説(裏面,図書の項参照)を公刊する一方,個別的論考として,(2)「アエネーイス』における「苦難」を扱った論文,これをもとに,(3)同作品の「非情」に着目した論文,および,(4)オウィディウス「変身物語』第2巻に語られるパエトンの物語に関する論文を発表(裏面参照)し,加えて,(5)「審判異聞-オウィディウス『変身物語』の場合」(特定領域研究(A)「古典学再構築」B01「伝承と受容(世界)」班研究成果報告書所収)が印刷中である.(2)の論文は「アエネーイス』における「苦難」が作品前半では主人公に,後半では主人公の宿敵を軸に描かれることを観察し,その意味を考察したが,それを踏まえて,(3)では,作品中での「非情」のいくつかの側面を観察しつつ,古来問題とされてきた結末場面について再検討した.(4)の論文では,オウィディウスが,叙事詩の技法を本来の用法とは異なる形で取り込むことにより,そこに生じる形式と内容の不整合を作品全体の提示に生かしていることを,また,(5)では,「審判」のモチーフに内在する逆説的要素が『変身物語』において多彩に展開されていることを観察した.
|